これで説明と言えるのか…南浦和中1自殺、調査報告書公表まで4年 遺族への情報提供乏しく「改善の余地」

第三者委員会とさいたま市教育委員会の記者会見を傍聴後、記者会見で心境を話す母親=23日午後、埼玉県さいたま市内

 埼玉県さいたま市立南浦和中学校1年の男子生徒が2018年8月に自殺した問題で、市教育委員会の設置した第三者委員会は23日、調査報告書を公表した。第三者委の調査は19年7月に開始され、公表するまでに約4年を費やした。遺族への情報提供は最小限にとどめられ、大きな課題が残った。第三者委と市教委は「改善する余地があった」「改善していきたい」と述べた。

 今年3月に東京聖栄大を退職した岡田弘座長(心理学)が、遺族への説明を行っていた。第三者委は遺族への情報提供を最小限とし、途中の取材にも応じない方針を決めていたとしている。調査の長期化の理由や議論の内容の説明がないことから、遺族は不信感を募らせ、2回にわたり、座長の解任を要望。要望を受け入れられないまま、座長は病気を理由に、23日の記者会見を欠席した。昨年から入退院を繰り返していたという。

 臨床心理士の湯谷優副座長は、長期間かかった理由について、「多くの要素があり、コロナ禍もあった。慎重に聴き取り調査を実施した」と説明。弁護士の和泉貴士調査専門員は「資料が非常に少ない状態で原因究明は難しく、時間がかかった。遺族を待たせてしまったことに関して、われわれとしては非常に申し訳ないと考えている」と述べた。

 弁護士の久保村康史調査専門員は、遺族への情報提供について、21年9月に最初の報告書案を示すまで、「いつ調査会を開いたか、最小限しか伝えていない」と説明。和泉弁護士は「ここまで長期化すると想定していなかった。遺族は状況が分からず、フラストレーションをためたと思う。調査と遺族の要望への対応を並行して進めれば、短くなった可能性はある。反省しないといけないし、改善の余地があったと思う」と語った。

 細田真由美教育長は23日の会見で、遺族への情報提供が不十分だったと認めた。「市教委側が当初から、遺族に対する情報提供を(第三者委に)要請し、長くかかるのなら途中での開示をできる仕組み作りをしていきたい」と改善する意向を示した。

 遺族が21年10月に座長の2回目の解任要望を出してからは、説明が書面に変更された。委員5人の連名で、「協議内容は報告書(案)についての検討がなされました」と記されていた。母親は「待っているだけなのは、つらいものがあった」と心境を吐露。内容のない報告が続き、不信感が募ったという。母親は「これで説明と言えるのかと思っていた。私たちは終わってしまったが、お互いのために情報を出した方が良いと強く思った」と話していた。

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