朝乃山、復帰1年で挑む三役 実力派そろう上位戦へ

 元大関朝乃山は7月9日に初日を迎える名古屋場所で、復帰から1年を迎える。1年の謹慎期間で、番付は大関から入門当時と同じ三段目まで落ち、まさに一から出直しとなった。西三段目22枚目で復帰した昨年の名古屋場所では7戦全勝で優勝し、その後も番付を順調に上げて幕内上位まで戻ってきた。横綱や大関、大関候補の関脇陣とも胸を合わせることになり、年内の三役返り咲きを果たすための挑戦の場所になる。

 「2桁以上、優勝争いに加われるように頑張ります」。12勝3敗の好成績を収めた夏場所後、日本相撲協会の動画撮影に応じた朝乃山は早速、名古屋場所に向けた目標をこう語った。

 この目標は幕内復帰場所となった夏場所で掲げた目標と同じだ。終盤まで優勝争いに加わり、場所を盛り上げ、見事に目標を達成しているが、同じ目標でも意味するところは違う。

 千秋楽の一番を白星で締めくくった朝乃山は、復帰後初の三役以上との対戦を経験し「どれだけ自分の力が通用するか。全く通用しないと思う」と語り、次なる戦いに厳しい視線を向けた。相撲解説者の舞の海秀平氏(元小結)も「今の前頭上位は強い」と指摘する通り、前頭上位にも個性豊かな実力派がそろい、朝乃山が大関を張っていたころとは顔触れも変わっている。

 名古屋場所では関脇の大栄翔、若元春、豊昇龍の3人が同時に大関とりに挑むなど上位陣の層は厚く、朝乃山がこれまでのように白星を積み上げるのは容易ではない。

  ●信用取り戻し、再び人気力士に

 昨年7月11日の名古屋場所2日目、復帰戦を白星で飾った朝乃山は謹慎後初めて取材に応じ「うそをついたことで、もう応援してもらえないと思った。まだ、したことが許されるわけではないですけど、土俵で戦っていく姿を見てもらい、信用を取り戻していきたい」と誓った。

 その言葉通り、真摯(しんし)に相撲に向き合う姿勢は、ファンにも伝わっていた。番付を上げるたび、会場のエールは大きくなっていった。幕内に戻るころには大関時代を上回る人気力士になった。新型コロナウイルスの感染防止対策が緩和された夏場所は、声援の大きさが横綱をしのぐほどだった。

 協会が公式ユーチューブチャンネルで公開した動画に登場した朝乃山は、名古屋の好きなところを問われ「ないです(笑)。名古屋は味が濃くて」と冗談めかすなど、持ち前の明るさが戻っていた。

 復帰から1年で完全にみそぎを済ませて信用を取り戻し、ここからは挑戦のステージに入る。多くのファンの期待と声援に応えられるか、注目の土俵が迫る。

 ★復帰後の番付推移

23年名古屋場所 東前頭4枚目

23年夏場所   東前頭14枚目 (12勝3敗)

23年春場所   東十両筆頭  (13勝2敗)

23年初場所   西十両12枚目 (14勝1敗)

22年九州場所  東幕下4枚目 (6勝1敗)

22年秋場所   東幕下15枚目 (6勝1敗)

22年名古屋場所 西三段目22枚目(7勝0敗)

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