京都・嵐山「ごみ箱」少なすぎ 食べ歩き観光客、空き容器手に「早く捨てたい」

食べ歩きを楽しむ観光客。ごみを手に歩く人も少なくない(京都市右京区・嵐山商店街)

 新型コロナウイルスによる行動制限の緩和に伴い、多くの観光客でにぎわう京都市右京区・西京区の嵯峨嵐山かいわい。近年ではテークアウト商品を提供する店が増えて食べ歩きを楽しむ人も多いが、嵐山商店街があるメインストリート・長辻通(右京区)には街頭のごみ箱が少ない。観光客からは困惑の声も上がる一方、商店街や市にとってはごみ処分は頭痛の種。利便性と景観保全の間で、関係者が苦慮している。

 5月下旬、昼下がりの嵐山商店街。レンタル着物姿で散策していた女性(15)=千葉県我孫子市=の手には、食べ終えたみたらし団子の串と容器があった。「ごみ箱が見当たらなくてずっと持っています。早く捨てたい」。困った様子の観光客は他にも。親子で観光中だった50代の女性も紙製の袋と串を手に「ごみを入れる袋を持って来ればよかった」と嘆く。

 商店街の飲食店では店先や店内にごみ箱を設置したり、利用者のごみを受け取ったりして対応している。だが、飲食物を販売していない土産物店でも観光客からごみを渡されたり、商品の陳列棚の隙間に放置されたりするケースが見られるという。2020年に商店街が加盟店舗を対象に実施したアンケートでは、「民間企業の自助努力にも限界がある」として、京都市へごみ箱の設置を求める声が上がった。

 実は、以前の長辻通には市が管理する街頭ごみ箱が4基あった。だが、ごみがあふれたり、入りきらないごみが周辺に放置されたりする状況が頻発。近隣住民からの苦情を受け、市は17年にごみ箱を撤去した経緯がある。

 これに対し、嵐山商店街の石川恵介会長(53)は「撤去するのは簡単」と指摘。「回収頻度を上げるなどごみ箱を適切に使ってもらえるようにする他の手だてはなかったのか」と訴える。

 市まち美化推進課の担当者は「昼間は観光客が多いため回収作業に手間取ることもあり、頻度を増やすのは難しい」と説明。長辻通から数百メートル離れた竹林の小径や野宮神社周辺に街頭ごみ箱を設置、「面的な設置でカバーしている」との考えを示す。

 また、市内全体を見れば、現在303基のごみ箱が設置されている。大阪市(0基)や神戸市(22基)などと比べて設置数が多いのが実情で、「数を増やすよりもマナー啓発などと合わせて対処したい」と理解を求める。

 観光客の増加に比例して増えるごみ。手をこまねいている訳にはいかないと、地元4商店街でつくる「嵯峨嵐山おもてなしビジョン推進協議会」は新たな取り組みを始めた。今年5月、これまで紙で配布していたごみ箱の地図をインターネット上に掲載。「嵐山ゴミ箱マップ」で検索すればいつでも見られるようにし、地図そのものがごみにならないよう工夫した。

 石川会長は、市の状況に理解を示しつつも「行政のごみ箱は必須」と強調する。その上で「ただ置くだけでは以前の状況に戻ってしまう。商店街としてもごみの持ち帰りの呼びかけや観光客の流れを分散させるなどの工夫をしていきたい」と話している。

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