中国の電気自動車乗り比べ ③ミニバン編

ミニバン編 理想(L9) 3台目

このたび、中国国内の自動車事情について知るため、自動車メーカー各社および開発区域に出向いて試乗体験をし、それぞれの自動車の乗り心地を比較するという試みをしてみました。各社の自動車乗り比べを通し感じたこと、および中国国内の現状をご報告させていただきます。

当レポートは、セダン編・SUV編・ミニバン編・コンパクトカー編・タクシー編・まとめ編に分けており、今回は3回目、ミニバン編をお届けします。

続きまして3台目は、中国国内で庶民から非常に人気を集めている、理想汽車の電気自動車に試乗してきました!一番の売りはまさに低価格であるということです。

まず最初に、ボンネットを開けてみましたが、空間がありません。中国で緑色のナンバープレートはEV車であることを表しているため、おかしいなと感じ、尋ねてみたところ(一般的な電気自動車はエンジン搭載されていないためボンネットに空間がある)、「ガソリンも使う」とのことです。どうやら基本的には電池を使って走るのですが、完全に電池のみではなく、走りながらガソリンを使って電池を生み出す仕組みがあるとのことでした。そのため車体右には電池充電用のプラグ口が、車体左にはガソリン給油用口があるという面白い外観です。完全にガソリンを使わない、という自動車ではないですが、緑色のナンバープレート申請ができるそうで、ガソリン車にかかる費用も軽減できるとのことでした。電気自動車の課題点の一つである充電の問題に対する面白いアイデアだと感じました。

↑車体右から電池充電、車体左からガソリン給油が可能

充電については、街中にある充電スタンドのほかTESLAの一部充電器も利用できるそうです。効率はあまりよくないが、自宅での充電もできます。

←ボンネット中は空洞ではなかった。

実際に車に乗ってみました。高級感はありません。内装はいたってシンプルで、普段の買い物から子供の送り迎え、旅行に行くなど家族連れにもぴったりな車種というイメージ。走行中の乗り心地は、既に乗った2台(NIOとキャデラック)と比較し、非常に『軽い』という感覚でした。軽自動車…とまでは言えませんが、気軽に乗れそうな感じで運転しやすそうです。

自動運転の機能についても色々と試してみてくれました。他社と同様、自動追従システムを使った際にはハンドル、アクセル、ブレーキを離しても走行・停車・発進には問題ありませんでした。一定時間ハンドルから手を離した際にもアラームが鳴りました。自動運転の機能からすると、そこまで大きな違いはないのかと思います。

自動追跡機能を使った状態でハンドルから手を離して交差点に入る状況がありました。その際、車体が突然大きく右に揺れ、ドライバーがハンドル操作しなければならなくなりました!少しびっくりしたのですが、このような動作が起こった理由を尋ねてみると、車は地面に引かれた線に沿って方向を認識しているためだそうです。その交差点には白線はなく、車が方向を認識できなくなり、突然大きく揺れてしまったとのこと。その際には人の手で運転せざるを得ないとのことでした。(後日、調べてみたところ他メーカーでも同様で、信号認識できず交差点においては手動運転が必要)

また、前の車が居ない状況(自分が先頭車)で信号待ちをしている場合、「信号が青になれば自動的に発進するのかな」と思っていたのですが、そうではありませんでした。車には信号を認識する機能がまだ搭載されておらず、あくまでも前の車に付いていくことしかできません。

交差点内で一瞬起こした作動、自分が先頭車になった際の作動を体験した際、私が率直に思ったことは、高速道路のような単調な道路上での運転はほぼ完全に自動走行できるが、教習所で繰り返し勉強したような「事故が発生する可能性の高い状況」での運転は、まだ人間の操作が必要であるとともに、開発の発展余地があるということです。ここまで自動運転のレベルが上がっているのであれば公道でも走れそうだな、と軽く考えていたのですが、やはりAIに任せっきりにできない状況、交通ルールとのリンクができていないということが身に染みて分かりました。

また、車の維持費用についてですが、常にネットと車が繋がっているため、いくら安いとはいえ、従来の燃料費に加え月々のインターネット通信料が固定費としてかかってきます。スマホと車も連動しており、携帯電話会社・通信会社も、ネット通信を安定させたり、より車を使いやすくするという任務を果たすための新たな段階にきているのかもしれないな、と感じました。

3台目の試乗では、自動運転の危険性を感じるとともに、自動車メーカー以外の業種も新たな段階に向けて開発に取り組んでいるようで、より興味が湧いてきました。

次回コンパクトカー編につづく。

© HKP