「とても幸せな時間」乳がん経験者、温泉でゆったり交流 ランチやウィッグ試着も 兵庫・三田

アドバイザーのえりこさん(左)に医療用ウィッグのアレンジを教わる参加者=三田市富士が丘5

 乳がんを経験した女性たちが集まるイベント「乙女温泉」が、兵庫県三田市富士が丘5の温浴施設「寿ノ湯」で開かれた。市内や加古川市など県内を中心に、徳島県からも含めて18人が参加。ゆったりと温泉やランチなどで触れ合い、医療用ウィッグ(かつら)の試着やアレンジも楽しんだ。(尾仲由莉)

 乳がん経験者のためのコミュニティー「Reborn.R(リボンアール)」が主催。自らも乳がんを経験した代表の渡辺愛さん(51)=同県尼崎市=が、「治療後の脱毛や手術の痕を気にしてしまい、温泉に行きづらい」などと当事者たちの経験談を聞いたことがきっかけだった。

 地元の銭湯「蓬莱(ほうらい)湯」(尼崎市)の女将(おかみ)に相談したところ、「気持ち良いことを諦めるのはもったいない」と定休日に施設を貸してくれた。「乙女温泉」の名前は、女将の「いくつになっても女は乙女だから」という言葉から付けた。活動は2020年10月に始め、これまでに北は北海道、南は福岡県まで全国で30回近く行ってきたという。

 三田市内で初の「乙女温泉」では、みんなでお風呂に入った後、医療用ウィッグの楽しみ方をアドバイザーのえりこさん(40)らから教わった。えりこさんも乳がん経験者。ウィッグとメークで普通の人と変わらず外出できることに気付き、今ではウィッグをファッションの一つとして楽しむ姿を交流サイト(SNS)で発信している。

 参加者たちは、スカーフをカチューシャのように巻いて気になるつむじを隠すなどのアレンジを教わったり、今までしたことのない髪形や髪色のウィッグを試着したりし、「似合ってる」「かわいい」と声をかけ合っていた。寿ノ湯特製のカレーランチを食べ、自己紹介タイムなどで交流を深めた。

 宝塚市から参加した女性(46)は「自然なウィッグがあることを知れて安心感を持てた」。三田市内の女性(40)は「勇気を振り絞って参加したが、話しづらいことも共有できて、とても幸せな時間でした」と喜んでいた。

 リボンアールの渡辺さんは「乳がんを経験したから今の自分があると思ってもらえるように、これからもみんながやりたいことを実現できる場をつくりたい」と話していた。

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