社説:ふるさと納税 抜本的な制度見直しを

 小手先の見直しでは、制度自体のゆがみを解消できまい。

 ふるさと納税制度のルールが10月から変更されることになった。

 総務省は2019年、自治体が寄付を募る経費は「寄付額の50%以下」というルールを設けたが、返礼品調達費や送料、広報費などに加え、今後は寄付金の受領証明書の発行費といった寄付後にかかる経費も含めるとした。

 返礼品となる地場産品の線引きも厳格化する。例えば熟成肉と精米を寄付者に送る場合、原材料が同じ都道府県産であることなどの条件を設けた。

 総務省は「制度の趣旨に沿わない」と返礼品競争の抑制を掲げるが、そもそも自治体同士で税収を奪い合わせ、その半分しか地元に役立てられていない実態こそ直視しなければならない。

 ふるさと納税制度は、好きな自治体に寄付すると、一律負担2千円を引いた額が居住自治体の住民税などから控除される。

 出身地への恩返しや、ゆかりの地を応援することで、地方税収の格差を是正し、地域活性化につなげるのが狙いとされた。

 だが、返礼品の豪華さで寄付を募る自治体間競争が激化するケースが相次いできた。

 総務省は返礼品を地場産品に限定し、寄付額に占める割合を30%以下に決めるなどの対策を重ねてきたが、脱法的なルール破りは後を絶たない。

 自治体にとっては、ふるさと納税をした住民の税収を他自治体に奪われる形になる。財政への影響は大きく、「疑問はあっても、競争に加わらざるを得ない」(京都の自治体幹部)という。

 ふるさと納税の寄付総額は、新型コロナウイルス禍の巣ごもり需要を背景に、21年度で8300億円を超えた。約4400万件となる寄付件数とともに、過去最高を更新し、膨らみ続けている。

 京都府もこの10月からふるさと納税の寄付集めに本格参入し、収入の一部を府内市町村に配分する仕組みを創設する。

 一方、寄付額のおよそ半分は、返礼品の調達や大手仲介サイトへの手数料などに費やされている。本来は住民サービスに使われるべき財源にほかならない。

 創設から15年が経過し、つぎはぎだらけとなった制度は根本から点検すべき時だろう。

 善意であるはずの寄付に、見返りが必要なのか。出身地支援の原点に立ち戻り、抜本的に組み直すことを求めたい。

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