「夜明け前のシラス漁、神戸以外で聞かない。マジでおいしい」若手漁師ら、新ブランド「夜明けのしらす」に手応え

漁を終えた船から続々と水揚げされるシラス=神戸市垂水区平磯3

 「港町」。豪華な客船や巨大な貨物船が行き交う神戸の代名詞だが、市西部に限ってみれば、実は漁港や船だまりが連なる漁師町でもある。豊かな海があるのに、鮮魚売り場では、明石や淡路産に比べると「神戸産」をうたった商品が多くない-。そんな危機感から立ち上がった若手漁師たちがいる。ブランド化を目指し、団体を立ち上げて3年。第1弾商品「神戸夜明けのしらす」に手応えを感じ始めたという。日焼けした海の男たちは、声を大にしてアピールする。神戸の魚はうまい-。(段 貴則)

 団体名は「コウベペアトローリングス」。シラス漁に携わる漁師5人が2020年7月に設立した。名前は、2隻(ペア)で一つの網を引くという漁法に由来する。現在は約10人が参加している。

 神戸の海は、六甲山の森や西北神の田畑から流れてくる養分たっぷりの地下水と瀬戸内海の海流によって、魚の餌となるプランクトンが豊富な漁場。全国的に播磨灘のイカナゴが知られるほか、シラス(イワシの稚魚)の漁獲量日本一の兵庫県で、特に神戸のシラスは、イワシの中でもおいしいとされるカタクチイワシの稚魚という。

 団体設立メンバーの山田幸治さん(46)=神戸市須磨区=は「昔はシラスが神戸産として出回ってなかったし、それを何とも思っていなかった」。ところが近年、イカナゴの不漁が続くなど、海や漁業を取り巻く環境は大きく変化。「もっと神戸の魚の付加価値を高めよう」と動き出した。

 まず、シラス漁の時間帯に特徴があることから、ブランド名は「神戸夜明けのしらす」とした。神戸沖の漁場へは大阪などからも船が集まるが、夜明け前の朝4時から網を入れられるのは、神戸の漁師だけ。シラスがプランクトンを食べ始める前に網を入れるため、身の透明度が高く、ゆでても黄色くならない。また、水揚げ後、すぐに加工場で釜揚げをする。

 山田さんは「夜明け前のシラス漁は神戸以外で聞かない。鮮度も抜群でマジでおいしい」と太鼓判を押す。今後、他の魚もブランド化を目指すという。

 夜明けのしらすは、市漁業協同組合の直売所(同市垂水区平磯3)で販売中。150グラム702円。同直売所TEL078.708.1616

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