漢字書ける人、文章も上手 京都大学グループが中高生分析「手書き教育大切」

京都大学

 漢字の書き取りが得意ならば、文章もうまい-。漢字と文章読解・作成の両方の検定を受けた中学生と高校生の成績データの分析から、京都大学医学研究科のグループが研究結果としてまとめた。文章作成能力の向上には漢字が読めるだけでは不十分で、スマートフォンやチャットGPTの普及が進む中、「手書き教育の大切さを見直してほしい」と訴えている。

 同研究科の村井俊哉教授と大塚貞男特定助教のグループは、日本漢字能力検定協会(京都市東山区)が実施する「日本漢字能力検定(漢検)」と「文章読解・作成能力検定(文章検)」のデータベース解析を行っている。今回、「漢字を書く力が文章作成能力に直接影響する」との仮説を立て、漢検の「書字」と文章検の「文章作成」のそれぞれの成績について相関を調べることにした。

 2019年10~11月と翌20年1~2月に実施された漢検と文章検の「3級」(中学卒業程度)を中心に、両方を受けた中高生719人(平均年齢16.25歳)の成績を用いて分析した結果、両者には仮説通りの関係があることが分かった。

 一方、漢字を読む能力と意味の理解が十分なら「文章作成能力は事足りる」とした仮説は当てはまらないことも分かった。キーボードの変換で正しい漢字を選べても、必ずしも文章作成能力の向上にはつながらないと言え、これらの結果から「手書き能力は文章作成に独自の影響力があり、代替できない」と結論づけた。内容は、国際学術誌にオンライン掲載された。

 過去の漢検データの調査で、研究グループは、08年のスマートフォン日本上陸の前後で20~30代の漢字を書く成績が低下したとする結果もまとめている。

 精巧な文章などを作る「チャットGPT」などの生成AI(人工知能)も急速に普及していることから、研究グループは「これからは『書く』よりも『校正する』比重が高まるかもしれないが、従来の手書き教育が高度な言語能力の発達には必要だとみられる」と話している。

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