宝泉寺温泉郷、着実に進む復興 豪雨で被災の宿泊施設、全て再開へ【大分県】

温泉プール付きのヴィラタイプにリニューアルしたSAKURA別邸=九重町
ビジネスホテルとして営業を再開する「旅館やひろ」=九重町

 【九重】2020年7月の豪雨で大きな被害を受けた九重町の宝泉寺温泉郷で、復興が着実に進んでいる。被災した宿泊施設11軒のうち、営業再開が遅れていた1軒がリニューアルオープンし、残る1軒も近く再スタートを切る予定だ。いずれも宝泉寺になかったタイプの宿に変わり、温泉街の魅力アップに貢献する。

 床上まで浸水し、解体を余儀なくされた「御宿みやこ」は、「SAKURA別邸」として5月下旬に営業を再開した。松平努社長(48)は「やっとここまでたどり着いた。宝泉寺の復興をアピールし、安心して足を運んでもらえるようにしたい」と意気込む。

 全室離れのヴィラタイプ(3室)で1室約200平方メートルのゆったりした造り。各室に温泉プール(8メートル×4メートル)がある。「暮らすように泊まる」をコンセプトに家具や調度品も上質なものにこだわった。

 1泊素泊まりで1人6万3800円(税込み・2食付きは2万2千円増)から。出張シェフサービス(夕食のみ)も利用できる。「宝泉寺では唯一のリゾートタイプ。地域の価格帯を引き上げ、国内、アジアだけでなく欧米からも呼び込みたい」と松平社長。

 合掌造りの趣ある建物が人気だった「旅館やひろ」は、基礎部分から倒壊した別館を建て替え、ビジネスホテルに生まれ変わった。今夏の営業再開を目指し、保健所への許可申請など手続きを進めている。

 「元々、ビジネス目的の客が多かった。うちにとっても、時代の流れを考えても自然な結論」と中原勝利代表(80)。目の前を流れる河川の復旧工事に時間を要したため建物は着工が遅れたものの、無事に完成できたことに安堵(あんど)する。

 「『再開したらまた行くよ』と、心待ちにしてくれている常連客も多い。長年やってきたこの場所で、また頑張っていく」と決意を新たにしている。

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