多世代つながる日岡地域食堂 大分市の糸永さん、大学で学び直し設立【大分県】

どら焼きを作る児童=大分市松原町
糸永早織代表(前列左から3人目)らボランティアスタッフ

 【大分】大分市日岡地区で、幅広い世代を対象にした「日岡地域食堂」が月1回開かれている。シングルマザーの糸永早織さん(50)=家事支援サービス・アイニー代表、同市下郡南=が41歳で早稲田大人間科学部(通信教育課程)に入学し、福祉を学んで設立した。

 糸永さんは1男1女を育てながら、県内の病院で臨床検査技師として働いたが、限界を感じた。「自分には夢がない。60歳になっても働くには勉強しなければ」と一念発起し、早稲田大へ。階級・階層論を聴講したことが転機になった。

 「死に物狂いで働いても上にいけない。自己責任と思っていたが、そうじゃない。仕組みの問題なんだ」と衝撃を受けた。地域福祉論で福祉の大切さを再認識し、「地域を活性化する活動をしよう。食堂を開設したい」と自分が進む道が見えた。

 在学中は児童養護施設や知的障害者グループホーム、重度障害者居宅訪問介護の夜勤を掛け持ちし、講義のない昼間に食堂の開設に向けた勉強をした。睡眠時間は毎日約3時間だったが、「絶対に食堂を成功させる」という夢が力になった。

 食堂の開設準備を始めた2018年、家事支援サービス会社を起業した。翌年、大学を卒業し、昨年5月に夜勤業務を辞めて家事支援に一本化。「収入の2割を地域に還元する」と心に決めて、20年に日岡地域食堂を立ち上げた。新型コロナウイルス禍による休止を経て、昨年11月に再開した。

 会場は同市松原町の高齢者福祉施設「碧(あお)」で、6月25日には児童や保護者ら計15人が参加。高齢者に教えてもらいながら、エプロン姿の児童がコロッケやどら焼き作りに挑戦した。受け付けを担当した礒辺佑一郎さん(81)=同市花高松=は「次代を担う子どもたちに『日岡は良かった』と思ってもらいたい」と話す。

 当初から支援する原川地域包括支援センターの中西政俊センター長(41)は「高齢者が子どもたちの世話をすることは、介護予防につながる」と効果を語る。糸永さんは「人と人をつなげ、地域のセーフティーネットを目指す」と話した。

<メモ>

 日岡地域食堂は高齢者が先生になり、子どもと一緒に調理する。会場はデイサービスが休みの日に借りている。年内の開催日は毎月最終日曜日(ただし12月は24日)。時間は午前10時半~午後1時半。参加費は1日当たり小学生100円、中学生~大学生と65歳以上は200円、一般300円。未就学児は無料。

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