国鉄特急食堂車「サシ581」移設展示へCF 「国内最後の1両」青森・八戸市から千葉県に

八戸市の民有地に保管されている食堂車「サシ581ー31」の今年3月の姿。4月に雨漏り防止に向けブルーシートをかけたため、現在は外観を見ることができない(583系食堂車保存会提供)
食堂車の車内=2023年3月撮影、583系食堂車保存会提供

 国鉄の特急形寝台電車の食堂車として1972年に製造され活躍、86年の引退後に青森県八戸市内の民有地で保管されてきた車両「サシ581-31」を、千葉県いすみ市の民間運営の鉄道ミュージアム「ポッポの丘」に移設、展示したい-。そんな思いで鉄道ファンらが、搬送費を調達するクラウドファンディング(CF)を始めた。事業を企画する任意団体「583系食堂車保存会」は「当時の内外装の状態を保つ国内最後の1両」と支援を呼びかけている。

 所有者は、八戸市根城で障がい者施設「柿の木苑」を運営する社会福祉法人ぶさん会理事長の豊山信子さん(58)。元施設長で母の故・くにさんが国鉄から取得。隣接する民有地に置き、書籍などを入れる倉庫として使ってきたが、近年、老朽化が進んでいた。

 583系食堂車保存会は、ポッポの丘のサポーターチームの20~50代が主体となって結成した任意団体。保存会によると、食堂車は長さ約20メートル、幅約2.8メートル。連結する寝台車が3段式ベッドのため、高さ約4.5メートルと屋根が高いのが特徴という。外装と同じ色を手すりに使用したインテリアなどを備えている。

 保存会側の会員数人が今年3月に八戸市を訪れ食堂車を視察し、豊山さんと懇談。CFが実現すれば、豊山さんが保存会側に食堂車を無償譲渡する方向が固まった。八戸から千葉まで、トレーラーで陸送される。

 豊山さんは「修繕費がかさみ、譲渡先が見つからなければ解体するつもりだった中、ありがたい話をいただいた。良い状態で鉄道施設に引き継ぐため温かく見守り、協力していただければ」と話している。

 保存会会長の梅原健一さん(52)=千葉市=は「高度経済成長時に製造され、人々の思い出が詰まった昭和の食堂車を、今の子供たちにも見せたい」と支援を呼びかけている。

 CFは目標額1500万円で6月23日にスタート、8月21日まで行う。CFはホームページ(アドレスhttps://readyfor.jp/projects/sashi581-31)で受け付ける。

ポッポの丘 現役を引退した懐かしの鉄道車両を集めたテーマパーク。2011年5月にオープンした。敷地面積1.2ヘクタールで、私設の鉄道車両展示施設では国内最大級。現在は28両が保存、展示されているが食堂車はなく、八戸からの移送が実現すれば、パーク内唯一の食堂車となる見込み。営業は金、土、日、月曜と祝日の午前10時~午後4時。入場無料だがバイクは500円、自動車は千円の駐車料が必要。

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