義務化から1年 違反高齢ドライバー技能検査 長崎県内の受検者数、想定下回る

実車試験の対象者が運転する軽自動車=長崎市、長崎自動車学校

 高齢ドライバーの交通事故対策を盛り込んだ昨年5月の改正道交法施行から1年が経過。75歳以上で過去3年間に一定の違反歴がある高齢ドライバーに対し、運転免許証を更新する際、運転技能検査(実車試験)が義務化された。長崎県警によると、県内の受検者は4月末時点で962人で、当初想定していた約2千人を下回った。安全運転支援装置が付いた車に運転を限定するサポートカー(サポカー)限定免許の取得者はゼロだった。
 6月21日、長崎市矢上町の長崎自動車学校。実車試験の対象となった3人が緊張した様子で待っていた。「車を運転できなくなったら生活できない」と話す人も。
 実車試験の課題は(1)指示速度で走行(2)正確な一時停止(3)右折、左折(4)信号(5)段差の乗り上げ-の5項目。基本的な安全確認の有無が合格の鍵という。認知機能検査もあり、3人は16枚の絵を使って認知機能を検査。認知症の疑いがあると判断されると不合格になる。
 結果は実技、認知機能検査とも合格。同市内の女性(77)は「合格して、ほっとした。また雲仙に花を見に行ける」と笑顔をみせた。同校の井出幾英課長は「高齢になると運転時の判断が鈍くなる。迷ったら無理をせずに運転をするように指導している」と話した。
 県警によると、県内の実車試験の合格率は3月末時点で89.1%。全国平均の89.8%とほぼ同水準だった。一方、不合格者は99人。このうち免許を返納したのは3人。再受検で合格したのは49人だった。残る47人は今後の対応を検討しているという。
 サポカーの限定免許の取得者は全国的にも伸び悩み、3月末時点で17人に交付された。九州では福岡と鹿児島で各1人で、本県はゼロ。県警によると、高齢ドライバーの中にはサポカーを運転するものの、サポカーに限定した免許証に更新しない人もいる。
 県警交通部運転免許管理課の山下伸二次席は「実車試験制度は円滑に機能している」とした上で、予想を下回る受検者数について「高齢ドライバーの安全運転への意識の高まりがあるのだろう」と分析。「引き続き、運転免許の自主返納やサポカー限定免許を高齢者の事故防止の手段として推進していきたい」と話した。


© 株式会社長崎新聞社