阪神元町駅「有楽名店街」9月末で閉鎖 昭和の“残り香”漂う神戸の地下街、76年の歴史に幕

今年9月末で営業を終える有楽名店街=神戸市中央区元町通2

 阪神元町駅の西口と東口を結び、居酒屋などが並ぶ日本最古級の地下街「有楽名店街」(神戸市中央区)が9月末で閉鎖し、76年の歴史に幕を下ろすことが分かった。防火の問題があるとしてテナント貸主の阪神電鉄が2016年での閉鎖を決めた後も十数店が営業してきたが、コロナ禍で客足が遠のくなどし、店の自治会で一斉閉店を決めた。その後の運用について阪神は未定としている。

 同名店街は約120メートルの地下通路にあり、終戦間もない1947(昭和22)年に「阪神メトロ街」として開業。59(同34)年に現在の名称に変わり、スナックや小料理屋など約50店が軒を連ねて港湾労働者や会社員らでにぎわった。

 2014年3月に大阪・阪急十三駅前の飲食店街で39店が焼けた火災を受け、阪神は同11月、名店街で避難時の安全を確保できないとして16年3月末での閉鎖方針を伝え、当時の三十数店に明け渡しを要請。うち3店の借り主を提訴し、明け渡しを命じる大阪高裁判決が18年4月に確定した。

 一方、店主や客らは「昭和の風情が残る街を残して」と署名を募って存続を求めてきたが、阪神は明け渡しに応じない2店を神戸地裁に提訴。店側は「契約打ち切りは事前説明が不十分」と反論したが21年10月、阪神が解決金を支払うとする大阪高裁案を双方が受け入れ、和解が成立した。

 その後もコロナ禍で閉店が続き、現在営業するのは9店のみ。いずれも9月末には閉業・移転する予定だ。

 店の自治会「有楽名店会」会長の南富久さん(74)は、父の代から名店街で理容店を営む。「店の数が減り、空調など共用設備の維持費も負担になっていた。閉鎖は寂しいが、仕方ない」と話した。(小野坂海斗)

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