「誰にも相談できなかった」不妊手術強いられた兵庫の原告女性 旧優生保護法訴訟、神戸で第1回弁論

国に謝罪と補償を求め、神戸地裁に入庁する原告や支援者ら=神戸地裁、神戸市中央区橘通1

 旧優生保護法(1948~96年)下で障害を理由に不妊手術を強いられたのは違憲として、聴覚障害がある兵庫県内の女性2人が国にそれぞれ3300万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が11日、神戸地裁(島岡大雄裁判長)であった。女性が手話で「優生手術で本当に苦しい思いをしてきた」と訴えたが、国は請求棄却を求めた。

 原告はいずれも60代で、神戸市の女性と県内に住む女性。訴状によると、神戸市の女性は、はしかによる高熱で難聴となり、20代だった90年、帝王切開で第2子を出産した際に不妊手術を受けさせられた。

 県内の女性は、生まれながら聴覚障害があり、20代だった81年に帝王切開で第1子を産んだ際、不妊手術が行われた。女性は2人とも手術の説明を受けなかったという。

 弁論で、神戸市の女性は、意味が分からないまま、書面に署名をさせられ、不妊手術が行われたと説明。新たに子どもを授かることはなく、生理が止まって病院に行っても医師に「問題ない」と言われ、「何も分からず、誰にも相談できず、(手術から)30年間黙っていた」と明かした。

 原告側の代理人弁護士らも主張を述べ、「(旧法は)障害がある人を『不良』とみなして優劣を付け、憲法が保障する個人の尊厳や人格価値の平等に反した」と指摘。幸福追求権の一つ「自己決定権」を奪い、「明白に憲法に違反する法律だった」と強調した。

 一方、国は答弁書で、不法行為から20年で損害賠償請求権が消滅する民法の規定「除斥期間」を適用し、訴えを退けるように求めた。

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