ねぶたの喧噪 細部まで/志功「絵巻」、青森で鑑賞会

棟方志功の倭画「禰舞多運行連々絵巻」の特別鑑賞会で、見どころを解説する千葉さん(左端)

 青森市出身の世界的板画家・棟方志功(1903~75年)が晩年、青森ねぶた祭のにぎわいを全長17メートルの絵巻に仕立てた倭画(やまとが)「禰舞多(ねぶた)運行連々(れんれん)絵巻」の特別鑑賞会が16日、青森市のねぶたの家ワ・ラッセで行われた。同市の棟方志功記念館で開催中の生誕120年記念特別展「友情と信頼の障屏画(しょうへいが)」の関連イベントとして企画したもので、ねぶた名人の千葉作龍さん(76)が絵巻の細部にわたって解説。「祭りの喧噪(けんそう)が聞こえてくるようなすごい迫力がある」と評した。

 絵巻は74年、「別冊太陽」(平凡社)の特集企画として制作。棟方本人とチヤ夫人を表現した金魚ねぶた、酔っ払って寝そべるハネト、今ではほとんど見られなくなった一人担ぎのねぶたなど、当時の運行の様子を棟方らしい躍動感あふれる筆遣いで描いた。

 原画は棟方志功記念館が所蔵し、鑑賞会ではレプリカをケースなしで公開。事前に申し込んだ市民ら約20人が絵巻を間近で眺めながら、1時間半にわたって千葉さんの解説を聞いた。

 千葉さんは、ハネトのかけ声が「イペラセ」と記されるなど現在との違いを説明しながら、祭りが終わる寂しさを棟方が表現している点を指摘。「私も子どもの頃から青年期にかけて、ねぶたが去っていく物悲しさを感じた。最近は哀愁がひとかけらもない」と冗談交じりに懐かしんだ。

 参加者たちも時折千葉さんに質問するなど、絵巻に興味津々。青森市の工藤祐子さん(64)は「志功の明るくておおらかな性格がよく表れている」と満足げだった。

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