「青森でも音楽活動できる」地元でインディーズレーベル主宰 RYOさん(青森市)

「東京になんか行かなくても音楽活動はできる。気軽にうちのレーベルを使って」と話すRYOさん

 楽曲提供から曲のアレンジ、レコーディングまで低予算で音楽制作全般をサポートするインディーズレーベル「Honey Syndrome Music(ハニーシンドロームミュージック)」が青森市浪館にある。同レーベルを主宰するRYOさん(38)は「東京に行かなければ音楽ができない時代は終わった。地元で本格的に活動したい人を応援し、青森の音楽シーンを盛り上げたい」と力を込める。

 もともとミュージシャン志望だったRYOさんは青森中央高校を卒業後、東京の音楽専門学校に進んだ。その後都内でスタジオミュージシャンとして働いていたが、作曲・編曲の腕を買われ、20代半ばで年間数十本の楽曲制作依頼が舞い込むようになった。「物心ついた頃から表現欲求があり、バンドマンとして売れなければ作曲家になりたかった」という。

 だが2011年に起きた東日本大震災で状況は一変する。都内で活動していたアーティストが夢を諦めて地元に帰ってしまい、先々まで入っていた仕事が全てキャンセル。RYOさんは「ネットが発達し、どこにいても曲を作れる時代になりつつあった。東京にこだわるつもりはなかった」と振り返る。

 同年、地元にUターンし介護関係の資格を取得。訪問介護の仕事をする傍ら、機材をこつこつと買いそろえた。15年には青森県の短命県返上に向けた「だし活」のテーマソングを提供。16年にはバンドメンバーでもあるNia.(ニア)さんと結婚し翌年、自宅にスタジオを構えた。

 「機材もあり、技も持っている。何か面白いことができるならみんなと共有したい。なぜ音楽をするのかと聞かれるのは、なぜ飯を食うのかと聞かれるのと一緒。音楽をやめたいと思ったことはない」

 21年には多数のアーティストと契約してレーベルを本格始動。きっかけは八戸市の中学生ソロシンガー・KAGETUさんとの出会いだった。「この人なら自分の書きたい曲が書ける」。そう思ったRYOさんが声をかけ、KAGETUさんは21年9月にファーストシングル「My Little Hell」でCDデビューを果たした。7月24日にはファーストアルバム「Teenage Dream」をリリースする。

 「社会人や学生がお小遣い感覚で音楽を楽しめる環境をつくりたい」とRYOさん。「オリジナル曲が欲しい」などといった個々の要望に低予算で応えるため、月額5千円からの定額サポートシステムを導入した。「東京になんか行かなくても、やりたいことはできると実感している。それを証明したい」。思いを形にするため、今日もスタジオで音楽と向き合っている。

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