数少ない福祉ネイリスト、お年寄りの心もカラフルに彩る 高齢者施設を訪問

「高齢者の表情が緊張から笑顔になるのがやりがい」と語る市村さん(京都府久御山町内のカフェ)

 京都府南部で少ない福祉ネイリストとして、高齢者施設を訪問し、コミュニケーションを大切にしながら爪を彩る。市村真莉子さん(40)は、お年寄りから、昔の思い出などの話を引き出して傾聴することで安心感を作り出す。「認知症の人にも、おしゃれになった爪先を日常生活でふと目にすることで、楽しい時間を思い出してもらえれば」と語る。

 爪に色を塗り、装飾を施すネイルに最初はためらいがあった高齢者も、施術後は「きれい」と何度も眺め、「お出かけしたい」「離れて暮らす家族に写真を送りたい」と日々の活力に。施術時のスキンシップも、心の安定に効果的だという。

 自身にとって、ネイルは大学生の頃から気分を盛り上げるために不可欠だったが、20代後半で子育てが始まるといったん遠のいた。「時間もお金もない」と同じ悩みを抱えるママ友に塗ってあげると喜ばれ、美容に再び気持ちが向くようになった。

 当時あまり注目されていなかった高齢者美容に関心を抱き、「日本保健福祉ネイリスト協会」(東京)の認定資格を今年2月に取得。京都府久御山町内の事業所で事務職として働きながら、休日などに仲間の福祉ネイリスト3~4人と、有料老人ホームやグループホームに出向く。初回は無料で、2回目以降は有料だ。

 高齢者1人あたりの施術は約20分。塗る色を決めてもらい、その上に描く絵柄も選んでもらう。絵柄は花やハイヒール、ハートマークなど50種類を用意し、アジサイや七夕といった季節に応じたリクエストにも応える。色はマニキュア、絵柄は水彩絵の具を使うため除光液などで落としやすく、体調急変時など血中酸素濃度の測定に影響しないように心がける。

 残念なのは、福祉ネイリストの存在があまり知られていないこと。「爪先から広がる笑顔」を届けるべく、町内のマルシェやカフェにも出店して、魅力を広げる。

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