涼しい建物内での仕事だったのに、まさか…気をつけたい「熱中症」を気象予報士の視点から考えてみた

7月20日、東海地方をはじめ、近畿、中国地方、21日は四国、北陸地方と日本各地で梅雨明けが発表されました。2023年は、梅雨明けの発表前から35℃を超える猛暑日が続いたり、最低気温が25℃を下回らない熱帯夜が続き、体に負担のかかる状況が続いています。

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この暑さによって注意が必要になるのが熱中症。ただ、熱中症は暑い外で活動しているときだけ起きるわけではありません。

(気象予報士 田中健太郎)

体に負担がかかる状況が続く今年の夏

■涼しい環境下なのに…なぜ?

わたしも先日、熱中症の症状が出てしまいました。涼しい会社の中で過ごしていたのにも関わらず、体中がしびれてきたのです。これはまずいと思い、医務室に行ったところ、38度の熱。経口補水液を飲みながら、横になってわきの下や足のつけ根を冷やしてもらいました。対応が早かったためか、症状は30分ほどで改善し、熱も36度台まで下がりました。

涼しい環境で過ごしていても、起こってしまった熱中症。前日までの疲労がたまっていたのかもしれません。熱中症は「体の状態」によってかかりやすい場合もあるのです。

例えば、下痢やかぜ、インフルエンザなどによる脱水状態。糖尿病や精神疾患といった持病を持っている方。二日酔いや寝不足といった体調不良。高齢者や乳幼児、肥満の方。そして、低栄養状態。

わたしも連日続く猛暑で体に負担がかかった状態になっていたのかもしれません。ただ、早く対応を行ったことで症状はすぐによくなりました。熱中症は早めの処置が大切です。

■熱中症の症状が出たら

熱中症の代表的な初期症状は、めまいや立ちくらみ、一時的な失神。このほかにも手足がしびれる、気分が悪い、筋肉のこむら返りなどがあります。こういった症状が出たときは、まず意識がはっきりしているかを確認しましょう。

意識がもうろうとしているようであれば、迷わず医療機関へ。意識がはっきりしている場合は、次のような対処法を行いましょう。

◇安全で涼しいところに移動しましょう

横になれる場所を探し、風通しのよい日陰や、冷房の効いている室内に移動しましょう。この時、自分の足で歩ける状態でもめまいや立ちくらみ、一時的な失神によるふらつき、転倒にも注意してください。

◇横になって休みましょう

足を10センチほど高くすることで、心臓への血流がよくなって血圧が上がり、脳への血流を改善させる効果を期待できます。

◇保冷材やペットボトルなどにタオルやハンカチを巻いて、体を冷やしましょう

静脈の通る首筋やわきの下などを冷やすのが効果的です。

◇水分補給を行いましょう

スポーツドリンクや0.1%~0.2%の濃度の食塩水(1リットルの水に対して1~2グラムの食塩を加えたもの)などを自分で飲み、体内から失われた水分、塩分を補います。自分でうまく飲めない場合や、嘔吐や吐き気などがあって水分補給に適さない場合は、医療機関を受診しましょう。

熱中症の初期症状であるめまいや立ちくらみ、一時的な失神を生じたときには、

クーラーの効いた屋内や涼しい日陰で休み、衣服を緩めて風通しをよくし、体を冷やして、適切に水分を補給すれば、多くの場合は改善します。しばらく様子を見て、症状が改善しないような場合には、医療機関を受診するのがよいでしょう。

■気をつけたい「環境」

また、熱中症を引き起こす要因となるのは体の状態だけではありません。「環境」も熱中症の原因となります。

「環境」で気をつけないといけないのは…

◇気温が高い

◇湿度が高い

◇風が弱い

◇日差しが強い

◇閉め切った屋内

◇エアコンのない部屋

◇急に暑くなった日

◇熱波の襲来

これらの要因により熱中症が起こってしまう恐れがあります。

「最近、昔より暑い気がする…」と感じたことはないでしょうか。

これは気のせいではなく、昔に比べ、実際に気温が上がっているのです。

■2000年代以降は「真夏日」がコンスタントに…

静岡県内で最高気温が30℃以上である真夏日の日数が増えていることが分かるデータがあります。

静岡の真夏日日数のグラフ、長期変化傾向を見ると長期的に真夏日の日数が増えていることが分かります。また、それぞれの年の真夏日日数を見ると1980年頃は20日に届かない年もありましたが、2000年代以降はほぼコンスタントに毎年40日以上です。

そして、日本全体としても気温は上昇しています。

■地球温暖化にヒートアイランド現象…厳しくなる「環境」

日本の夏(6月~8月)平均気温偏差の経年変化のグラフです。黒線は各年の平均気温の基準値からの偏差、青線は偏差の5年移動平均値、赤線は長期変化傾向、基準値は1991年~2020年の30年平均値です。

年によって平均気温は大きく異なるものの、長期的に見ると気温は上昇しているのが分かります。これは地球温暖化による影響やヒートアイランド現象、数年~数十年程度の時間規模で繰り返される自然変動が重なっていると考えられるのです。

熱中症を引き起こす「環境」の要因は、昔より厳しくなっているのが分かります。

■無理は禁物

また、熱中症を引き起こす要因となるものには「行動」もあります。

「行動」で気をつけないといけないのは、

◇激しい筋肉運動や慣れない運動

◇長時間の屋外作業

◇水分補給できない状況

こまめな休憩を心がけたり、天気予報を確認して無理をせず過ごすことが大切です。

<参考文献>

「熱中症ゼロへ みんなの力で熱中症をゼロにしよう」ホームページ

「環境省 熱中症予防情報サイト」ホームページ

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