終盤の逆転でR&Bレーシングの4号車ポルシェが優勝。日本勢最上位は2日連続で永井/上村組【GTWCアジア第8戦もてぎ】

 7月23日(日)、栃木県のモビリティリゾートもてぎでファナテックGTワールドチャレンジ・アジア・パワード・バイ・AWS第4ラウンドのレース2となる第8戦の決勝が行われ、R&Bレーシングの4号車ポルシェ911 GT3 R(ルー・ウェイ/デニス・オルセン)が優勝を飾った。

 前日に行われた15分間のレース2予選では、プロドライバーが激しいアタック合戦を展開。リヤエンジンのポルシェ911 GT3 R勢が速さを見せると同時に、上位16台が1秒以内に収まるという大接戦となった。

 ポールポジションを獲得したのはアブソリュート・レーシング992号車のマッテオ・カイローリ。2番手はAASモータースポーツ・バイ・アブソリュート・レーシング911号車のアレッシオ・ピカリエッロ、3番手はR&Bレーシング4号車のデニス・オルセン、そして4番手にはポルシェセンター岡崎18号車の上村優太と、日欧のポルシェ使いたちが上位を固める結果となった。

第8戦の予選でポールポジションを獲得したアブソリュート・レーシング992号車ポルシェ911 GT3 Rのマッテオ・カイローリ(左)

 第8戦は土曜日のレース2予選を担当したドライバーがスタートを担当。プロ/アマクラスでは、実質的にプロドライバーがスタートを務めることになる。60分のレースタイムのうち、25〜35分の10分間のピットウインドウでピットインし、ドライバー交代するレギュレーションで、GT3車両には90秒、GT4車両には125秒という一律の最低ピットタイムが設定されているほか、前戦のトップ3には1位15秒、2位10秒、3位5秒がサクセスハンデとして追加される。

 予選2番手の911号車が、ブティンコン・インタラプワサクの警告ポイント累積により10グリッド降格の裁定を受けたことで、フロントロウには992号車と4号車が並び、2列目からは18号車ポルシェとトリプルエイトJRMの88号車メルセデスAMG GT3が並んでスタートを切ることとなった。

 気温30度/路面温度47度というドライコンディションのもと11時40分にフォーメーションラップがスタート。

 スタートでは、992号車ポルシェが順当に首位をキープし、4号車ポルシェ、88号車メルセデスの順で2コーナーをクリア。18号車ポルシェは4番手へとポジションを下げる。4コーナーから5コーナーへと向かうストレートでは、ハブオート・レーシングの72号車ポルシェと、アウディスポーツ・アジア・チーム・アブソリュートの11号車アウディR8 LMS GT3が側面同士で接触。

 さらに5コーナーでは、ファントム・プロ・レーシング333号車アウディと72号車が接触、72号車はさらに背後からも押されるような形となりスピンし、そこに差し掛かった後続の複数台が巻き込まれるマルチクラッシュへと発展してしまう。

 ここで、スピン車両を避けるために減速していたプラス・ウィズ・BMW Mチーム・スタディ5号車BMW M4 GT3が、背後のマシンに激しく追突されてしまう。荒聖治はマシンをピットまで戻したが、無念の2日連続リタイアとなってしまった。5号車のほか、72号車と11号車を含む計4台が0周リタイアという波乱のスタートとなった。

スタート直後、3コーナー進入の様子

 オープニングラップではKCMGの22号車ホンダNSX GT3 EVOが5番手に順位を上げたほか、クラフト・バンブー・レーシングの37号車メルセデスが8ポジションアップの6番手、Dステーション・レーシング47号車アストンマーティン・バンテージAMR GT3の藤井誠暢も7つ順位を上げ、8番手につける。

 序盤、6番手の37号車ファビアン・シラーを先頭に、8台程度の接近戦に。5周目に入るホームストレート、藤井は背後の911号車アレッシオ・ピカリエッロのチャージを受けるが、絶妙なラインを取って1〜2コーナーで封じ込める。その後しばらく、数珠繋ぎの6番手争いはこう着状態が続いた。

Dステーション・レーシング藤井と先頭とした8番手争い

 ピットウインドウが開いた時点で、首位992号車は、2番手の4号車に対し2.5秒のマージンを築いていた。その3秒うしろに88号車、さらに5秒後ろに18号車と、トップ4はややばらける展開となっていく。

 上位勢は定石どおり、プロドライバーの乗車時間を引っ張ることに。そんななか、15周目を終えた残り31分というタイミングで、上位では最初にピットへ飛び込んだのが47号車藤井だった。星野敏へとドライバー交代する。

 翌周には37号車がピットへ向かい、+5秒のハンデも消化してコースへと戻っていく。

 トップ4台はその翌々週、一斉にピットへ。992号車は難なく首位をキープ。10秒のサクセスハンデを消化した18号車も、4番手のままコースへと復帰した。

■トップ2台のポルシェが急接近

 全車がピット作業とそれに続くアウトラップを終えた19周目の時点ては、首位992号車から4号車は3.3秒、さらに3秒うしろに88号車。18号車はさらに18秒ほど後方となった。

 後半戦にまず激化したのは5番手争いだった。残り19分となった21周目には、911号車がクラフト・バンブーの85号車メルセデスパスして5番手に浮上、さらに背後では37号車も僚友85号車をパスしていく。

 時を同じくして、首位2台のポルシェが急接近。テール・トゥ・ノーズとなると、ここに88号車メルセデスのH.H.プリンス・アブ・バーカー・イブラヒムも追いつき、3台1パックの戦いに。残り14分、4コーナーのイン側から4号車のルーが992号車のバオ・ジンロンをパスして、首位浮上に成功した。

 4号車が逃げていく一方で、2番手争いはその後もコンマ差のテール・トゥ・ノーズが続いていったが、最後までオーバーテイクには至らず、4号車、992号車、88号車の順でチェッカーを迎えた。

 総合4位はジャパンカップ最上位となるポルシェセンター岡崎18号車の永井宏明/上村組。ジャパンカップ勢では総合9位のDステーション47号車が続いた。永井/上村組は前日の表彰台獲得もあり、ここもてぎラウンドで一気に獲得ポイントを伸ばし、ジャパンカップ首位で最終岡山決戦に臨むこととなった。

 GT3のアマクラスは、大蔵峰樹/濱口弘組のザ・スピリット・オブ・FFFレーシング19号車ランボルギーニ・ウラカンGT3 EVOが制した。

 GT4カテゴリーは、YZレーシング・ウィズ・BMW Mチーム・スタディの50号車BMW M4 GT4 G82(加納政樹/織戸学)が制している。

 次戦、第5ラウンドとなる岡山国際サーキットでの第9・10戦は、8月19〜20日に行われる。ジャパンカップはこの岡山が最終戦となり、各種タイトル決定の場となる。

優勝を喜ぶR&Bレーシング4号車のオルセン(左)とルー
ポルシェセンター岡崎の18号車ポルシェ911 GT3 R(永井宏明/上村優太)
2戦連続リタイアとなったプラス・ウィズ・BMW Mチーム・スタディの5号車BMW M4 GT3
GT3アマクラスを制した大蔵峰樹/濱口弘

■ファナテックGTワールド・チャレンジ・アジア・パワード・バイAWS

第4ラウンド/第8戦決勝レース結果

Pos. No. Class Team Car Driver Laps/Gap

1 4 GT3 Pro-Am R&Bレーシング ポルシェ911 GT3 R(992) L.ウェイ/D.オルセン 31Laps

2 992 GT3 Pro-Am アブソリュート・レーシング ポルシェ911 GT3 R(992) B.ジンロン/M.カイローリ 7.871

3 88 GT3 Pro-Am トリプルエイトJMR メルセデスAMG GT3 EVO H.H.プリンス・アブ・バーカー・イブラヒム/L.ストルツ 8.718

4 18 GT3 Pro-Am ポルシェセンター岡崎 ポルシェ911 GT3 R(992) 永井宏明/上村優太 24.632

5 37 GT3 Pro-Am クラフト・バンブー・レーシング メルセデスAMG GT3 EVO A.シュウ/F.シラー 30.306

6 911 GT3 Pro-Am AASモータースポーツ・バイ・アブソリュート・レーシング ポルシェ911 GT3 R(992) V.インタラプワサク/A.ピカリエロ 30.709

7 85 GT3 Pro-Am クラフト・バンブー・レーシング メルセデスAMG GT3 EVO J.リー/M.ゲーツ 39.160

8 87 GT3 Silver R&Bレーシング ポルシェ911 GT3 R(992) L.イェ/B.ユアン 39.711

9 47 GT3 Pro-Am Dステーション・レーシング アストンマーティン・バンテージAMR GT3 星野敏/藤井誠暢 46.826

10 19 GT3 Am ザ・スピリット・オブ・FFFレーシング ランボルギーニ・ウラカンGT3 EVO 大蔵峰樹/濱口弘 55.402

11 555 GT3 Pro-Am マエザワ・レーシング フェラーリ488 GT3 P.ブロムバクディ/横溝直輝 1’03.352

12 13 GT3 Pro-Am アウディスポーツ・アジア・チーム・アブソリュート アウディR8 LMS GT3 EVO II S.ジンズー/F.チェン 1’06.727

13 888 GT3 Pro-Am トリプルエイトJMR メルセデスAMG GT3 EVO H.H.プリンス・アブドゥル・ラーマン・イブラヒム/B.フィーニー 1’07.003

14 14 GT3 Pro-Am ハブオート・レーシング・ウィズ・GTO ポルシェ911 GT3 R(992) B.リー/安岡秀徒 1’18.943

15 60 GT3 Pro-Am LMコルサ フェラーリ488 GT3 中西慧/脇阪薫一 1’19.795

16 55 GT3 Am チームウエマツ マクラーレン720S GT3 植松忠雄 1’22.379

17 29 GT3 Silver ファントム・プロ・レーシング アウディR8 LMS GT3 EVO II L.カン/C.チー 1’24.385

18 7 GT3 Am コメット・レーシング フェラーリ488 GT3 山﨑裕介/辻子依旦 1’26.137

19 333 GT3 Pro-Am ファントム・プロ・レーシング アウディR8 LMS GT3 EVO II X.アン/M.マック 1’26.366

20 25 GT3 Pro-Am NKレーシング ポルシェ911 GT3 R(992) 内山清士/近藤翼 1’27.669

21 22 GT3 Pro-Am KCMG ホンダNSX GT3 EVO P.イップ/E.リベラティ 1’42.970

22 33 GT3 Pro-Am チームGMB メルセデスAMG GT3 EVO 羽田野宏明/細川慎弥 1’53.850

23 2 GT3 Pro-Am クライマックス・レーシング メルセデスAMG GT3 EVO Z.ビーファン/D.リンド 1Lap

24 1 GT3 Pro-Am カーガイ・レーシング フェラーリ488 GT3 木村武史/K.コッツォリーノ 1Lap

25 51 GT3 Am AMACモータースポーツ ポルシェ911 GT3 R(991.1) A.マクファーソン/W.ベン・ポーター 1Lap

26 360 GT3 Am ランアップ・スポーツ ニッサンGT-RニスモGT3 西川正明/田中篤 1Lap

27 17 GT3 Pro-Am クレフモータースポーツ マクラーレン720S GT3 鈴木祐子/井上雅貴 2Laps

28 50 GT4 Silver-Am YZレーシング・ウィズ・BMW Mチーム・スタディ BMW M4 GT4 G82 加納政樹/織戸学 3Laps

29 718 GT4 Am チェックショップ・ケイマニア・レーシング ポルシェ・ケイマン718 GT4 RSクラブスポーツ 大塚直彦/小林翔 3Laps

NC 72 GT3 Pro-Am ハブオート・レーシング ポルシェ911 GT3 R(992) M.チェン/A.パレンテ –

NC 11 GT3 Pro-Am アウディスポーツ・アジア・チーム・アブソリュート アウディR8 LMS GT3 EVO II A.ハルヤント/J.ユー –

NC 5 GT3 Pro-Am プラス・ウィズ・BMW Mチーム・スタディ BMW M4 GT3 山口智英/荒聖治 –

NC 3 GT3 Am クライマックス・レーシング メルセデスAMG GT3 EVO H.ユーチー/B.イェ –

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