茨城県北企業の挑戦後押し 「アイデアソン」2年目 外部意見で事業創出

県北地域の中小企業担当者(左)の説明に聞き入る参加者ら=日立市西成沢町

人口減少に直面する茨城県北地域で、中小企業の挑戦を後押しする県のプログラムが浸透してきた。企業のさまざまな経営課題に、異業種や学生など幅広い外部人材からアイデアを受けて議論を重ねる「アイデアソン」の会合が2年目を迎え、これまでに10社が新規事業創出などにつなげている。本年度も企業の顔触れを刷新した会合が始まり、さらなる商品開発や販路拡大が進みそうだ。

■飛躍へ協力を

「精密加工の技術を生かし、自社ブランドを立ち上げたい」「林業の若者雇用を増やしたい」

日立地区産業支援センター(日立市)で22日、本年度初めてのアイデアソン会合が開かれた。県北地域の製造、サービス、医療など中小企業10社が、一般から集まった約50人の参加者を前にそれぞれ抱える課題を説明した。

工業用品を製造する北茨城市の佐々木製作所は、相手先ブランドによる生産(OEM)を「自社の弱点の一つ」と分析。新たに開発した独自製品、ゴルフクラブグリップの認知度向上や販路開拓に向け、効果的な販売戦略について、協力を呼びかけた。

訪問看護ステーションを運営する日立市のWcoralは、不足している人材の確保が課題だと説明。育児などで職を離れた「潜在看護師」を雇用しやすくする新たな仕組みを構築できないか、アイデアを求めた。

■魅力的プラン

会合は中小企業の挑戦を支援する県の「県北ビジネスチャレンジプログラム」の一環で、昨年度から始まった。人口減少が深刻化する日立、常陸太田、高萩、北茨城、常陸大宮、大子6市町の中小企業が抱える課題に、県内外から参加した経営者や技術者、営業マン、行政関係者、学生など多彩な人材が各企業とともに魅力的なビジネスプランを探る。

アイデアソンは「アイデア」と「マラソン」を掛け合わせた造語。各企業が参加者と5、6人のチームをつくり、来年1月までに開かれる計7回の会合で、アイデアを出し合い議論を重ねていく。

最終回の会合では、成果報告会を開き、それぞれのチームがまとめた事業内容を披露する。実際に企業がその事業を展開し、課題の克服や雇用創出、県北地域の活性化などを目指していく。

■10社が新事業

昨年度は10社の課題に、延べ500人の参加者が事業創出や販路開拓などの挑戦を支えた。

会員向けの新サービスを模索していた日立市の葬祭業、いばそう企画は昨年度の会合で生まれた新事業を今月から展開する。健康づくり体操や「やりたいこと」の記録・実行を促す催しで、林三弘社長は「これまでの死後のサービスだけでなく、生前に楽しむイベントにも取り組む」と意気込む。

イベント会場などで子どもの遊び場を提供してきた大子町のまちのこ団は、認知度向上が大きな課題だった。増田大和代表は「子育て支援のための重要なインフラとして強調することで、事業価値の向上を図った」ことにより、今年からプロスポーツの試合会場での遊び場提供につながったという。

県県北振興局は「人口を増やすためには、魅力的な企業や職場を生み出す必要がある。多彩な人材のアイデアを基に、魅力ある企業が増えるよう貢献したい」と期待を込めた。

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