山岳遭難防止へ連携 県警とモンベル

共同開発した背負いバンド

 富山県警は26日、安全安心な登山の実現を目指し、アウトドア用品大手「モンベル」(大阪市)と協定を締結した。県警山岳安全課によると、モンベルが警察と協定を結ぶのは全国初。同社の高い商品開発力と県警山岳警備隊の豊富な経験を合わせ、救助用装備や資機材の共同開発に取り組む。山岳遭難事故防止に向けた啓発活動でも協力する。

 協定書は▽山岳遭難防止の啓発活動▽救助用の装備と資機材の開発、改良▽安全・安心な登山の実現に向けた施策全般の3項目に関して連携して取り組むとしている。協定の有効期間は来年3月31日までで、以降は1年ごとの更新となる。

 県警山岳安全課によると、県警は以前からモンベルと連携して山岳事故防止のキャンペーンを展開している。双方ともに連携を強化してより効果的な活動をしたいとの思いが強くなり、協定を結んだ。

 協定締結に先立ち、県警とモンベルは既に救助用装備の共同開発に取り組んできた。県警山岳警備隊員が使用する「背負いバンド」と呼ばれる装備で、動けなくなった要救助者を背負って下山する時に使う。これまで発注していた県内の業者が製造しなくなり、性能向上を図ることにした。

 昨年冬ごろから開発に着手。従来の布からナイロンに素材を変えて軽量化した上で、耐久性を高め、背負った時の安定感も向上させた。既に救助現場で使用しており、隊員の意見を取り入れながら改良を重ねている。飛弾晶夫隊長は「体の大きい外国人にも対応できる」と話した。

 今後、山岳事故防止の啓発活動もより充実させる。店頭での啓発活動に加え、モンベルが発行する雑誌に県警が実際の遭難事例や安全対策を寄稿する。モンベルクラブの会員は現時点で約115万人。県内外の登山愛好者に広く注意を呼び掛けることで、事故を減らしたい考えだ。

 締結式が県警本部で行われ、石井敬千本部長とリモートで出席した辰野勇会長が協定書にサインした後、画面越しにグータッチして協力を誓った。

 辰野会長は自身も剱岳など立山連峰でよく登山しているとした上で、県警山岳警備隊との連携について「現場の声を反映していく」と意欲を見せた。県警の石井本部長は「毎年、事故の7、8割を占める中高年への啓発活動が重要だ」と話した。

画面越しにグータッチする辰野会長(左)と石井本部長=県警本部

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