長男(当時10歳)にエアガン 「イライラ」「言うことを聞くかと」傷害の罪に問われた父親に求刑 広島地裁

去年、広島市の自宅で長男に向けてエアガンを発射し、けがをさせたとされる父親の裁判で、検察は懲役1年6か月を求刑しました。弁護側は、エアガンの弾は長男の体に当たっていないと主張しています。

起訴状によりますと、父親の男は去年1月、広島市南区の自宅で当時10歳の長男の体にエアガンを発射し、口の回りに打撲をさせた傷害の罪に問われています。

去年4月の初公判で父親は起訴内容を認めていましたが、その後の裁判で「長男に向けて撃ったわけではない」と一部否認に転じています。

これまでの裁判で父親は、エアガンの入手先について「会社のつきあいでサバイバルゲームをしていて入手した」と明かしたうえで、「自分がエアガンで撃たれるとどれだけ痛いかっていうのを知っているので、もし長男に当たっているとそうとう痛がると思うんですけど、そういうのはなかったので当たっていないと思う」と説明。

長男の居る方向に向けてエアガンを撃ったものの、「長男には当たっていない」と説明していました。

27日の公判では、長男の居る方向にエアガンを撃った理由について、子育てに悩んでいたことを明かしたうえで、「言うことを聞かなかったので手元にあったエアガンで威嚇した」などと話しました。

弁護人
「長男の子育てについて児童相談所からアドバイスを受けたことはありますか?」

父親
「放っといてみる、怒るのをやめる、自分のスペースを作ってあげるのが良い…と言われ、実行しました。うまくいかないことの方が多くて、(長男は)放っとけばエスカレートするし、終いには次男に手を出すし…。その時はまた怒ったりしました。結局、妻と2人で悩みましたが、自分の仕事の都合もあり、妻が1人で児相に相談に行っていました」

また、事件当日は父親自身も「イライラしていて冷静でいられなかった」といいます。

弁護人
「エアガンを撃った日、(自身の)借金のことでイライラしていたんですか?」

父親
「その日は会社にも給料の差し押さえの連絡が来て迷惑をかけて、そうとうイライラしていました」

弁護人
「長男の居る部屋に向けてエアガンを発射したことについて、今はどう思っていますか?」

父親
「一番してはいけないことをしたし、怒り方もほかの方法があったと思う。児童相談所以外にも相談すれば、違う答えがあったかもと思います」

事件から1年半以上が経ちますが、父親は家族と別々で暮らしています。

検察側から、今後について問われると…

父親
「長男の特性を今は理解できたので、だいじょうぶだと思う。うまくいかないときは、第三者…、同じ子育てをしている方に相談して知識を得たい。子どもと一緒の時間を増やすとか、長男をこれまでよく見ることがなかったので、これからはよく見て、何ができて何ができないか、本人のことを知らないと、こっちもうまくできないので、そういうところから始めようと思います」

妻や長男らもまた一緒に暮らすことを望んでいるとしたうえで、『やり直したい』と話しました。

裁判はこの日、結審。

検察側は、「長男が事件翌日に学校の担任に対し『(長男の)手元のペーパークラフトが撃たれてぐしゃぐしゃになって、ぼくに当たった』などと話していることや医師の証言などから、長男の口元の傷はエアガンの玉が当たったとして矛盾はしない」などとして、懲役1年6か月を求刑。

弁護側は、「長男は口元の傷について、事件翌日に児相の職員に対して『あまり痛くなかった』『ゴミが当たったかと思った』と言っていて、父親が撃ったエアガンの弾によるものではない」などと主張しました。

広島地裁は、被害者の長男の特定を防ぐためとして、父親の名前を明らかにせず、裁判は匿名で進んでいます。

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