外ケ浜町の民話「かんだ蟹(がに)」が本年度、公益財団法人日本財団(本部東京)の「海ノ民話のまちプロジェクト」に青森県で初めて採用され、アニメ化される。28日、同町役場でアニメ制作スタッフと町関係者が、シナリオ作りや作画に向けて意見交換した。
同プロジェクトは、同財団の「海と日本プロジェクト」の一環として2018年から行われている。海との関わりや地域の誇りを次世代に語り継ごうと、海にまつわる民話が残る地域を「海ノ民話のまち」に認定。民話をアニメ化して記録、伝承に役立てており、これまで全国で42本の民話をアニメ化した。本年度は外ケ浜町など25地域の民話アニメを制作する。
「かんだ蟹」は旧蟹田町の民話。藩政時代、町の宿屋に泊まった旅人が宿代代わりに描いたカニの絵を海に浸すと、絵から出たカニが沖に逃げた。その後、春になると大量のカニが取れるようになり「蟹多」と呼ばれるようになったと伝わる。
旧町職員で郷土史研究家の赤平斗与一さん(故人)が伝承を昔話として本にまとめた。
会合には赤平さんの娘の美恵子さん(70)、本の挿絵を描いた髙森逸郎さん(86)ら町関係者、アニメ監督を務める沼田心之介さんらが出席。あらすじの下書きを見ながら「カニの絵は地元のトゲクリガニを参考にして」などと意見を出し合った。美恵子さんは「民話を知る人は住民でも少ない。子どもたちに興味を持ってもらえるとうれしい」と話し、沼田さんは「地元の方の思いを確認できた。心に残る良い作品にしたい」と意気込んだ。アニメは年内完成を目指し、来年1月ごろ上映会を行う予定。