県産ウナギ

 松浦市の小さな港に面した陸上養殖施設。水槽をのぞくと、たくさんのウナギがくねくねと心地よさそうに泳いでいる。「長崎産はほとんど出回らないので、とても希少ですよ」。現場を切り盛りする長崎陸上養殖の松山貴充さんは誇らしげに語った▲この養殖場には大きな特徴がある。ウナギは一般的に淡水で養殖されるが、ここは全国でも珍しい海水施設。ミネラル豊富な海の水を使うと、うま味が強く、臭みの少ないウナギが育つのだそうだ▲海の魚で培った長年の経験とノウハウを生かし、冬に最盛期を迎えるトラフグの“裏作”として、地元のウナギ店などに出荷。かば焼きなどの加工品はふるさと納税の返礼品として注文が年々増えているが、昨今のシラスウナギの不漁・高騰などで養殖数には限りがあるという▲ウナギ養殖は鹿児島や宮崎が盛んだが、本県でも5業者が国の許可を受けている。だが生産量は極めて少なく、国の統計には数字すら記載されていない。いわば「幻のウナギ」なのだ▲最近は大手外食チェーンなどがお手ごろ価格でウナギ料理を提供するようになり、個人的には食べる機会が増えた。一方、地域住民らに長年親しまれている老舗店など「地元の味」も大切にしていきたい▲きょうは土用の丑(うし)の日。さて、どこに食べに行こうか。(真)

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