意味知ってる?ビーチの赤白フラッグは津波警報 視覚で情報伝達、気象庁「見たらすぐ避難を」

若狭和田ビーチに配備されている津波フラッグを持つライフセーバー=福井県高浜町和田
愛知県田原市の避難訓練で建物に掲げられた縦3.2メートル、横1メートルの津波フラッグ=6月17日、愛知県田原市の赤羽根西海岸(同市提供)

 長方形を4分割した赤白の格子模様の旗をご存じだろうか―。津波警報の発表を海水浴客らに知らせる「津波フラッグ」のことだ。東日本大震災を教訓に、音が聞こえにくい状況でも視覚で情報伝達できるよう、気象庁が3年前に運用を始めた。ただ、まだまだ知られていないのが現状。福井県内では嶺南地域の4市町が導入しており、海水浴シーズンを迎え、福井地方気象台は「フラッグを見たらすぐに高い場所へ避難を」と呼びかけている。

 気象庁が発表する大津波警報、津波警報、津波注意報は緊急速報メールやサイレン、テレビ、ラジオなどで伝えられるが、屋外で視覚に訴える伝達方法はなかった。津波フラッグなら、波音や風で音を聞き取りにくい遊泳者や聴覚障害者にも伝わる。遠くから見えるよう気象庁は短辺100センチ以上の大きさを推奨。警報が発表されたら監視員らが振ったり、建物の壁に掲げたりする。

 2011年の東日本大震災では、聴覚障害者の死亡率が障害のない人の2倍に上った。国は20年6月に気象業務法施行規則を改正し津波フラッグを導入したが、同年夏は新型コロナウイルスの感染が拡大。多くの海水浴場が海開きをしなかったことで啓発が進まず、認知度の低さが課題となっている。

 導入した海水浴場がある自治体は全国で52%(210市町村、23年1月末時点)あり、気象庁は25年度までに80%以上とする目標を掲げている。愛知、神奈川、千葉各県の気象台によると今夏、この3県では海水浴場を開く全市町村で導入。愛知県田原市は6月に避難訓練でも使った。

 福井県内では海水浴場のある10市町のうち敦賀市、美浜町、おおい町、高浜町が計15海水浴場に配備している。高浜町の若狭和田ビーチでは、若狭和田ライフセービングクラブが放送設備のある救護所で2本保管。細田直彦代表(40)は「自らの安全確保が前提。ある程度旗を振った後は率先して避難誘導する」と話す。

 導入していない市町からは「海水浴場が小規模で監視員がいない。配備は難しい」との声があった。福井地方気象台の上田義浩・地震津波防災官は「一人でも多くの命を救うため、できる限り導入を検討してほしい」と話している。

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