棟方志功「御群鯉図」、故郷・青森県初公開 記念館(青森市)、1日から後期特別展

後期から展示される青森県初公開の倭画「御群鯉図」=31日午後、青森市の棟方志功記念館

 青森市出身の世界的板画家・棟方志功の生誕120年を記念した特別展「友情と信頼の障屏画(しょうへいが)」の後期展示が8月1日、同市の棟方志功記念館で始まる。31日は内覧会が行われ、棟方が岡山・倉敷の大原家のために描いた青森県初公開の倭画(やまとが)「御群鯉図(おんぐんりず)」(1940年)が登場。同記念館は老朽化などを理由に2024年3月末で閉館することになっており、小野次郎館長は「48年間の歴史を刻んだ最後の思い出として、この作品が多くの県民の心に残ってほしい」と願った。

 同記念館によると、御群鯉図は通常非公開で、所有者も公表されていない。00年、秋田市で開かれた巡回展で展示された際には青森県まで至らず。その後、同記念館が開館45周年に合わせて展示許可を得たが、新型コロナウイルスの感染拡大で公開が遅れていた。

 六曲一双の屏風(びょうぶ)には、32匹の緋鯉(ひごい)が群れをなして泳ぎ回る姿が描かれており、棟方を支援した実業家大原総一郎の32歳の誕生日を祝う意図があったとされる。

 鯉は棟方が得意としたモチーフだが、本作では筆の運びが抑制的で、余白を効果的に使いながら優雅な泳ぎを表現。同記念館の竹浪彩矢子(さやこ)学芸員は「棟方が障屏画を描き始めた頃の作品で、探り探りの部分がある。(恩義のある)大原さんのためということもあり、より慎重、丁寧に描いたのでは」と解説した。

 後期ではこのほか、棟方初の随筆集「板散華(はんさんげ)」を出版した京都・山口書店所蔵の資料7点を新たに展示。板散華の表紙デザインを示した肉筆原稿も含まれる。「友情と信頼の障屏画」は9月18日まで。

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