佐世保にもハチジョウネジバナ 長崎県内初確認 させぼパール・シー社員の石川さんが特定

県で初めて確認されたハチジョウネジバナを紹介する石川さん=佐世保市内

 神戸大をはじめとする研究グループが、ラン科植物「ネジバナ」の新種として発表した「ハチジョウネジバナ」が、長崎県内で初めて佐世保市で確認された。特定した「させぼパール・シー」(同市)社員の石川智昇さん(34)は「県内第1号を体験できて光栄」と話す。
 ハチジョウネジバナは、同大大学院理学研究科の末次健司教授らでつくる研究グループが今年3月、発表。東京都八丈島で多く見つかったことから名付けた。ネジバナ同様、芝生や公園など身近な環境で見ることができ、開花時期は4~5月とネジバナより1カ月ほど早いなどの特徴がある。現在東京の他、沖縄、三重など本県を含め13都県で確認されている(7月11日現在)。
 石川さんは東海大農学部出身で、九十九島動植物園(森きらら)で植物を担当したことも。5月22日、知人から佐世保市新田町の自宅の庭でハチジョウネジバナらしき植物を見つけたので確認してほしいと依頼を受けた。

県で初めて確認されたハチジョウネジバナ=佐世保市新田町(石川さん提供)

 ハチジョウネジバナはネジバナと違い花茎に毛がなく、知人宅の植物も無毛だった。ただ、鹿児島県奄美大島以南に生えるネジバナ属のナンゴクネジバナも同じく花茎に毛がない。ラン科植物は、種子がほこり状で風により散布されるため、温暖化の影響で北上している可能性も考えられる。
 この二つの違いは花粉塊の粘着体の有無。粘着体がなければハチジョウネジバナであると特定できるため、顕微鏡で確認すると粘着体はなかった。長崎大の中西弘樹名誉教授(植物生態学)にも花粉塊の写真を確認してもらい、5月31日、ハチジョウネジバナであると特定できた。
 末次教授は「ハチジョウネジバナが長年、他のネジバナ属と混同されていたことを考えると長崎での分布も十分に考えられた。このような地道な分布情報の蓄積が実態を明らかにするうえでも重要」との言葉を寄せた。石川さんは「ハチジョウネジバナの花期は春の行楽シーズン。そこに向けた芝地の草刈りで開花に至る機会が少ないだけで、ネジバナの中に多く紛れていると思う。今後も注視していきたい」と笑顔を見せた。

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