ブーム到来!キャンプ、グランピング施設が急増 兵庫・宍粟 絶好の立地、豊かな自然と「セレブ体験」

木材チップを敷き詰めた室内キャンプ場「Tonttu Hijima」=宍粟市山崎町塩山

 兵庫県宍粟市で近年、キャンプ場やグランピング施設が急増している。神戸新聞社の調べでは、市内に同様の施設が少なくとも計18カ所あり、うち5年以内に新設されたのは10施設に上る。キャンプブームを追い風に各施設の利用者数は好調に推移しているとみられるが、人口減少が加速する中、いずれは供給過多となる恐れもある。各施設の経営者らに現状や今後の戦略を聞いた。(村上晃宏)

 7月下旬の休日、宍粟市波賀町鹿伏の山あいにある「くるみの里キャンプ場」。木陰や広場にテントが並び、あちこちから談笑する人々の声が聞こえてくる。近くの引原川では、水しぶきを上げてはしゃぐ子どもたちの姿が見られた。

 娘や孫らと一緒に計12人で訪れた神戸市西区の会社員男性(65)は「普段はできない自然の遊びを子どもに体験してほしい」と柔和な笑顔を見せた。

 市域の約9割を森林が占める宍粟市。市内を揖保川や千種川などの清流が流れ、標高が高い場所では満天の星が広がる。豊かな自然環境がキャンパーらを引きつける。

 市によると、市の指定管理者が運営する計7カ所のキャンプ場・グランピング施設では、利用者数が2019年は2万446人だったが、22年は約1.9倍の3万8214人に増えた。

 市は交流人口や関係人口の増加を目指し、市内でのアウトドア活動を推進。キャンプ場などの施設を積極的に誘致しているわけではないが、今年も同様の施設が新たに4カ所できた。

 市はキャンプ場を、アウトドアを生かしたまちづくりを進める上で「中心的な役割を担う施設」と位置付けており現状を歓迎する。

### ■良好なアクセス

 新設ラッシュが続くキャンプ場だが、供給過多にはならないのだろうか。

 「各施設それぞれに特色がある。客のすみ分けはできているし問題ない」。同市山崎町塩山のキャンプ場「Tonttu・Hijima(トントゥ・ヒジマ)」を今年6月に開業した、同市地域おこし協力隊の福壽(ふくじゅ)晃希さん(28)は自信をのぞかせる。

 同キャンプ場は旧土万(ひじま)幼稚園の建物を活用。教室の床に木材チップを敷き詰め、室内でキャンプが楽しめるのが特徴だ。建物内にはスギやヒノキの香りが充満し、まるで森の中にいるような感覚に浸れる。

 7月末までに土日を中心に約70組が利用。初心者のキャンパーや家族連れにも好評という。

 4月に完成したグランピング施設「ウッドデザインパーク与位」(同町与位)は「快適さ」が売りだ。山の斜面に設営されたテントにはベッドやソファ、冷蔵庫や空調機、水洗トイレなどがそろう。近くの温泉施設やアマゴ釣りを楽しめる池も利用できる。

 20年にオープンした1日1組限定の貸別荘「SoLA☆YADO(ソラやど)」(同市一宮町東河内)。最大12人が泊まれるため、3世代家族や学生仲間に人気があり、リピーターも定着しているという。

 「都会の喧噪(けんそう)を忘れたセレブ体験ができる」とオーナーの吉川泰弘さん(49)。宍粟市は中国自動車道のインターがあり、大阪方面からのアクセスもいい。「グランピング施設は足りないぐらいだ。今後も増えるだろう」と予測する。

### ■新プラットフォーム

 市内の各施設が連携する動きも出てきている。

 トントゥ・ヒジマの福壽さんは、同市千種町のキャンプ場「たかのす東小学校」と「ちくさ放課後キャンプ場」との連携を模索。予約が埋まり、新規客を受け付けられない場合は、互いに紹介し合うシステムの構築を検討している。各施設を巡るスタンプラリーも企画しているという。

 福壽さんは「近隣施設と連携を図る共同のプラットフォームを作る。客を取り合うのではなく、協力することで市内への人の流れをつくり、地域の活性化につなげたい」と力を込める。

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