“職人技”惜しみなく公開し人気に すし職人渡辺哲也さん(栃木市出身) 【PLAY とちぎYouTube】

ユーチューバーとしても活躍するすし職人の渡辺さん

 魚のさばき方から刺し身の盛り方、すしの握り方まで-。技術や知識を惜しみなく、丁寧に解説する。“職人技”を公開することに、抵抗はない。「技術を自分の商売のためだけに使うのはナンセンス。どうせ食べるならおいしく食べた方がいいじゃないですか」。すし職人渡辺哲也(わたなべてつや)さん(35)=栃木市出身=は、あっけらかんと語る。

 板前としては、珍しい経歴の持ち主だ。栃木高から首都大学東京(現東京都立大)理工学部へ進学。在学中は八王子市内のすし店でアルバイトをした。

 すし職人を志したのは、就職活動中、面接官と話をしていた時だった。「君、すし屋になれば?」。その一言にはっとさせられたという渡辺さん。「思い立ったら即行動に移すタイプ」のため、すぐに大学を辞め、修業の道へと進んだ。

 振り出しは神楽坂のすし店から。厳しいイメージがある業界だが、「自分が遅れて入ったという意識があったので頑張れたし、すしが好きでやっているので、つらさもなかった」と話す。そして30歳の時、「鮨(すし) 銀座 おのでら総本店」に移った。この頃から、独立を意識するようになった。

 ただ、独立するには資金が必要だ。そこで思いついたのが、交流サイト(SNS)を活用した知名度アップ。しかし、ブログやインスタグラムは競合が多く思うように伸びなかった。次に取り組んだのが、ユーチューブだった。今でこそさまざまな料理人のチャンネルがあるが、当時はまだ前例が少なかった。「ユーチューブなら勝算はある」。そう確信していた。

 20年2月にチャンネル「銀座渡利」を、仮想店舗としてスタートする。分かりやすい説明で、情報はなるべく多く-。そんな動画を手がける。イワシのさばき方やカラスミの作り方の動画は、再生数が120万回を超えるなど、丁寧な解説が人気を呼ぶ。

 そして、同年10月に他店の一角を間借りする形で実店舗「鮨(すし) 渡利」を開店。22年10月には赤坂に移り、満を持して「桜坂 渡利」をオープンした。

 独自の道を歩む渡辺さんは「食のすそ野を広げたいとか、大それたことは思っていない」ときっぱり。ただ「高級店で働くことに憧れていても、地方にいて学べる場がない若者はいる。そういう人が検索して僕を見つけて、力になれるのなら、少しは業界に貢献できるのかな」とはにかんだ。

◆渡辺哲也さん◆

1988年1月23日生まれ。栃木市出身。首都大学東京(現・東京都立大)で学ぶ傍らアルバイトを通してすしに興味を持ち、修業の道へ。独立に向け2020年2月にユーチューブチャンネル「銀座 渡利」を開設。22年10月に「桜坂 渡利」をオープンした。

渡辺さんが握ったすし
渡辺さんが握ったすし
渡辺さんが握ったすし
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桜坂 渡利
渡辺哲也さん

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