長崎・平和祈念式典 縮小開催へ 台風接近で市関係者だけ 会場を出島メッセ長崎に変更

平和祈念式典の屋内会場への変更に向けて、設営が進む出島メッセ長崎=長崎市尾上町

 長崎市の鈴木史朗市長は6日会見し、台風6号の長崎県接近を受け、9日の「長崎原爆の日」に開く平和祈念式典の会場を、平和公園(松山町)から屋内の出島メッセ長崎(尾上町)に変更すると発表した。主催者の市関係者だけの縮小開催とし、岸田文雄首相や各国大使、全国の被爆者や市民らに参列見送りを連絡。鈴木市長は参列者の安全確保を理由に挙げ「本当に苦渋の決断」と述べた。
 現在の市主催の式典が1956年に始まって以来、参列を主催者に限るのは初めて。屋内開催は63年以来60年ぶり2回目。今後の天候次第で中止の可能性もあり、鈴木市長は「ギリギリまで調整する」とした。
 市長や市議、市職員以外の参列は原則なくなり、式次第は大幅に変わる。現時点で原爆死没者名簿3冊の奉安と黙とう、鈴木市長の平和宣言は行う。被爆者の工藤武子さん(85)=熊本市=による「平和への誓い」の実施有無は検討中。
 小学生や高校生による合唱は中止するが、鈴木市長は「別の機会にセレモニーができないか検討したい」と明らかにした。例年は式典後、被爆者4団体から首相に対する要望活動があるが、9日は中止し、後日何らかの形で行う。式典には首相や、核保有国を含む過去最多の85カ国(6日時点)と欧州連合(EU)の大使ら2400人規模の参列が予定されていた。
 首相に被爆者団体の要望書の趣旨を説明する予定だった長崎原爆遺族会の本田魂会長(79)は「天気には勝てない。式典参列者は高齢者が多いので安全な方法で実施するのがいい」と理解を示した。長崎原爆被災者協議会の田中重光会長(82)は「仕方ないが、岸田首相に直接、言いたいことが山ほどあった。長崎市のみでの開催は残念」と声を落とした。

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