勝負の8月を戦う広島カープ。週末は、マツダスタジアムに巨人を迎えての3連戦。よかった場面、印象的だったシーンを厳選して振り返ります。
8月4日(金)
試合前、首位阪神とのゲーム差は1.5。首位返り咲きへ、8月最初のカード勝ち越しを狙います。カープの先発は、野村祐輔 。ここまで4試合を投げ、自責点はわずか1。抜群の安定感を誇っています。
1回・2回と2イニング連続でランナーを背負いますが、ベテランらしい、ていねいな投球で無失点で切り抜けます。
早めに野村を援護したいカープは、2回、ランナー1人を置いて、7月26日以来のスタメン復帰の デビッドソン 。低いライナー性の当たりは、スピードを落とすことなくライトスタンドに。10号2ランホームランで先制点を上げます。
直後の3回、野村は、2つのヒットで1アウト3塁・2塁のピンチを背負います。しかし、このピンチを救ったのは、デビッドソンでした。ホームへの好送球で得点を許しません。
そして、2アウトから、2試合連続でホームランを放っている岡本。サードへのゴロで3アウトかと思いきや、上本崇司 、ボールが手につかず、さらに送球もそれてしまい、まさかの形で1点を返されます。
さらにフォアボールで満塁となり、大城に2点タイムリーを浴び、逆転を許します。
試練のマウンドが続く野村でしたが、4回、2アウト2塁・1塁のピンチで梶谷のセンターへ抜けようかという打球をセカンド・菊池涼介 が、驚きの守備範囲でつかむと流れるように送球。今度はバックが助けます。
その野村は、再三のピンチも要所をしっかりしのぎ、5回・99球を投げ、マウンドを後に託します。
逆転へ向けてリリーフ陣が望みをつなげます。8回・9回は、大道温貴 が、回をまたぎ、躍動感あふれる投球で「0」に抑え、1点差のまま、9回ウラに突入します。
すると先頭の菊池。その一振りに球場は大盛り上がり! ライト前に打球を運び、同点のランナーとして出塁します。
続く 野間峻祥 。バントかと思いきや、強硬策! 功を奏し、さらにサヨナラのランナーも出ます。
さらに 秋山翔吾 。ピッチャーの横に転がった打球を巨人がフィルダースチョイス。チャンスは満塁へと大きく広がります。
そして1アウトから、バッターは 小園海斗 。ファーストストライクを逃さずとらえ、タイムリーに。ついに同点へと追いつきます。
そして、ここで “とっておきの切り札” 、代打・松山竜平 。「思いをのせた」という打球でサードランナーがホームへ。逆転のカープここにあり! 1番からつないだ打線で神がかり的勝利を収めました。
広島カープ 松山竜平 選手
「ことし、一番緊張しました。当たりはよくなかったんですけど、とにかく初球から思い切って振ってやろうと思って、(ボールが)いいところに飛んでくれたので、よかったです」
「今、チームの雰囲気もすごくいいし、勢いにも乗っていると思うので、このまま突き進んでいきたいと思います。暑い日が続きますが、その暑さにも負けずにこうやって足を運んでくださるファンのみなさん、本当にありがとうございます。あしたからもみんなで一体感でがんばります」
8月5日(土)
劇的勝利から一夜明けたマツダスタジアム。マウンドに上がったのは、玉村昇悟 。森下暢仁 の抹消に伴い、巡ってきた2か月半ぶりの1軍登板でした。1回から140キロ後半のストレートに加え、変化球も抜群の制球力。開幕ローテに入りながら、わずか1勝のサウスポーが、2回までパーフェクトピッチングを見せます。
すると、2回ウラ。1塁にフォアボールの 坂倉将吾 を置いて、前日、ホームランの デビッドソン 。追い込まれていましたが、打った瞬間、確信の当たり。「コンパクトに、いいスイングができました」と自画自賛の2試合連発の第11号2ランで、この日も先制します。
3回には、先頭・小園海斗 が、初球打ち。2番・野間峻祥は、フルカウントから逆方向へ。1・2番が “らしさ” 全開の連打を見せると、3番・秋山翔吾 が、送りバントを決め、1アウト・3塁・2塁のチャンスを作ります。
そして、4番の 上本崇司 。内野は前進守備でしたが、3塁ランナー・小園が好スタート。3対0とリードを広げます。
さらに、チャンスで5番・坂倉将吾 。センターオーバーのタイムリーツーベースで4対0。巨人の先発・自身、4連勝中だった 山崎伊織 を早々とノックアウトします。
援護をもらった玉村は、バックの堅い守りにも支えられながら、5回までわずか1安打に抑え、およそ4か月ぶりの勝利投手の権利を得ます。
その後、岡本に一発を浴びたものの、先月25日に第一子が生まれ、パパとなった玉村。「球の強さが最後まであった」と新井監督も絶賛の7回・無四球・7奪三振・2失点の内容でした。
打線は、ラッキーセブンに2アウトからランナーを出し、田中広輔 。大歓声が沸く中、打球は真っ赤に染まるライトスタンドへ。およそ1か月ぶりの田中の6号2ランが飛び出します。
最後は、その田中のファインプレーでゲームセット。引き分けをはさんでの連勝を3に伸ばしました。
広島カープ 玉村昇悟 投手
「序盤はできすぎな感じだったんですけど、終盤、ヒットが出始めて点は取られたんですけど、なんとか粘れてよかったです。このチャンスを逃したら『もう、ことしはないな』と思って、それぐらいの覚悟でいきました。すごく調子のいいチームなので、自分が気持ちで負けたらもうダメだと思って、ガンガンいきました。次もチームの力になれるようにがんばります」
8月6日(日)
そして、8月6日(広島・原爆の日)。ピースナイターの先発を任されたのは、大瀬良大地 。被爆地の長崎出身とあって特別な思いを胸にマウンドに上がりますが、1回、セ・リーグのホームランキング、4番・岡本に2試合連続のホームランを浴び、2点を先に許します。
2回には去年までのチームメイト・長野。「大地から打てたことがうれしい」と復帰後、2本目となるホームランが飛び出します。
この日の大瀬良は、5回・4失点でくやしい降板となりました。
真っ赤に染まった大観衆を前に、カープは3回、ツーアウト・1塁でなんでもできる4番・上本崇司 。ゆさぶりをかけるセーフティーバント。そして、ヘッドスライディング。広島出身の上本が、ユニホームがボロボロになるほどの気迫でチームを、スタンドを鼓舞します。
忘れてはならない日に、広島の地で野球ができること―。5回ウラにはスタンドが緑色に染まり、球場全体が平和への思いに包まれます。
試合は、ジャイアンツ打線の勢いが収まらず、8回には広島出身・中田翔 の通算300号ホームラン。さらには岡本のこの日、3本目となる30号ホームラン。
今季、ワーストタイの13失点で敗れてしまいましたが、どんな展開でも真っ赤なファンの前でがむしゃらにプレーする選手たちの姿が印象的だった8月6日でした。