橋立の船頭住宅、宿に改装 北前船主集落の暮らし体験

宿泊施設の内装を整える宮本さん=加賀市橋立町

  ●加賀・加佐ノ岬倶楽部

 北前船交易で栄えた加賀市橋立町で、船頭の住宅だった空き家や蔵を改修した1棟貸しの宿がオープンした。同町でカフェギャラリーを運営する加佐ノ岬倶楽部(くらぶ)が手掛ける宿泊施設で、伝統的な赤瓦などの外観はそのままに、内装や水回りを現代仕様にした。北前船主集落の暮らしを体験できる宿として、国内外の観光客に利用を促していく。

  ●赤瓦そのまま、タンスをテーブルに

 宿泊施設は船頭住宅が1棟、蔵が2棟の計3棟あり、船頭住宅には5人、蔵にはそれぞれ2人が泊まることができる。浴室やトイレなどの水回りを最新式にし、寝室にベッド、リビングにソファを配置して外国人客の生活様式にも対応した。

 船頭住宅で実際に使われていたタンスをテレビ台やテーブルに活用するなど、往時の暮らしぶりも感じられるようにした。

 船頭住宅は加佐ノ岬倶楽部社長の宮本昭夫さん(76)の妻啓子さん(75)の実家で、長年空き家となっていた。重伝建(重要伝統的建造物群保存地区)の貴重な建物を残すため、1年半ほど前から宿泊施設を開業する準備を進めてきた。

 宿の名称は「マゴンド」で、啓子さんの実家の屋号をモチーフにした。宿泊施設の開業に合わせ、観光案内や土産物販売を行う管理棟も整備した。管理棟では郷土料理「茶番御膳(ちゃばんごぜん)」なども提供する予定だ。

 宿は7月22日にオープンし、これまでに台湾からの観光客らが宿泊した。住民有志でつくる加賀橋立北前船ツーリズム実行委員会と連携し、茶道や箏(こと)といった文化体験と宿泊を組み合わせた観光プランを提供していく。昭夫さんは「多くの人に利用してもらい、北前船ゆかりの住宅を次の世代につないでいきたい」と話した。

船頭住宅だった空き家を改修した宿泊施設

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