複合災害をいかに伝えるべきか・・・半世紀前に書かれた「空白の天気図」から今こそ学ぶ 柳田邦男さん講演会

「空白の天気図」を書いたノンフィクション作家、柳田邦男さんが9日、広島市内で講演し、複合災害と核戦争そのものの危険性を改めて訴え、それらをいかに記録し、伝えるべきかを語りました。

ノンフィクション作家 柳田邦男さん
「あの原爆被災で、8月6日の観測記録もちゃんと残っているし、きのこ雲を江波山の上から見たスケッチ図さえもちゃんと残しているんですね」

柳田さんは被爆30年の年にノンフィクション「空白の天気図」を出版しています。そこには、原爆の被害とそのおよそ1ヶ月後に甚大な被害をもたらした枕崎台風について、放射線障害に苦しみながらも必死に観測と現地調査を続けた気象台の台員たちの奮闘が記録されています。

枕崎台風の死者・行方不明者およそ3800人のうち、2000人余りが、広島での被害です。広島での被害が大きくなった要因は、地形や地質的な問題だけでなく、被爆により、通信機器が壊滅していたために防災情報が伝えられなかったことなども挙げられています。

ノンフィクション作家 柳田邦男さん
「複合災害というものが、単に『昭和20年にあった』ということではなくて、今後の複雑化した現代社会の中では、非常に普遍的な歴史的な教訓としてしっかり読み直さなきゃいけないのではないか」
「複合災害でなくても、核戦争こそ核爆弾の使用こそが、もう他に比べようのない大変な災害だ、言語に絶する災害だという、その原点が一番大事」

現在、国立追悼平和祈念館(広島・中区)では、この本を基にした企画展が開催中で、複合災害という言葉さえなかった時代に、被爆と台風の被害が重なることでいかに多くの人命が奪われてしまったかがわかります。

ノンフィクション作家 柳田邦男さん
「過去に起ったものであれ、今仮に起こった大事件なり、大災害なり、その原因を、直接的な狭い意味での原因ではなくて、背景にあったそれを防げなかった原因、それらを洗い出して、『こういう条件がそろったら大変なことになる』っていう教訓を伝えていく、これが大事なんですね」

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