家庭に眠っている椅子に新たな命を 別府市の建築事務所、修繕費用捻出へCF【大分県】

地域住民から寄せられた家庭で眠っていた椅子=別府市千代町

 【別府】別府市千代町の建築設計事務所「DABURA.m(ダブラエム)」が、家庭に眠っている椅子を修繕して、新たな命を吹き込むプロジェクトに取り組んでいる。同事務所が自社ビルを再生して9月に開業する宿の客室やカフェラウンジで使用する。修繕費用を捻出するためクラウドファンディング(CF)を通じて支援を呼びかけている。

 地域住民の「眠っている家具は多いが、思い入れがあって捨てられない」という声を受け、大切な椅子を譲り受けることにした。宿が地域の交流拠点を目指していることから、住民の思いが詰まった温かみのある椅子を使用することにしたという。5月から交流サイト(SNS)での発信やチラシの配布を通して呼びかけ、47脚が集まった。

 劣化した古い椅子が多く、背もたれや脚の部分の修繕、生地を張り替えるリメークをしてから使用する。地域の作家が別府の温泉と植物で染めた「温泉染め」の生地を使うなど、別府らしいものにする。

 譲り受ける際、「亡き祖父がお客さまを迎える時に使っていた」など、椅子にまつわるエピソードも聞いた。企画・広報担当の三上葵さん(22)は「事務所がある南部地域は少子高齢化が深刻で、空き家が増えるなど活気が失われつつある。思い出の詰まった椅子をいろんな人に使ってもらうことで、地域の記憶を受け継ぎたい」と話している。

 同事務所がプロデュースする宿「HAJIMARI Beppu」は9月25日にオープンする。酒類卸業の倉庫として使われていた中古ビルを改築中。宿泊機能だけでなく、南部地域の文化を発信する交流拠点を目指す。

 

<メモ>

 椅子の修繕費用はCFサイト「キャンプファイヤー」で9月16日まで、協力を呼びかけている。目標金額は30万円で、宿泊券などのリターンがある。問い合わせはダブラエム(0977.76.8744)。

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