シーボルト来日200周年 長崎・出島で企画展 日本滞在時の自然科学研究を紹介

シーボルトが刊行した「日本植物誌」収載の植物の絵のパネル展示に見入る親子=長崎市、出島和蘭商館跡

 江戸時代の出島オランダ商館医フィリップ・フランツ・フォン・シーボルトの来日200周年を記念し、日本滞在時の自然科学研究について紹介する企画展「シーボルトと川原慶賀パート1」が10日、長崎県長崎市の国指定史跡「出島和蘭商館跡」で始まった。シーボルトは1823年8月11日に長崎に到着、12日に出島に上陸したとされ、同市では11月にかけて記念行事の開催が続く。
 シーボルトは1796年ドイツ生まれ。オランダ軍医を経て出島の商館医として初来日。長崎に鳴滝塾を開いて門人に西洋医学を教授し、博物学者としても動物、植物の採集などさまざまな調査を実施。国禁の日本地図などの海外持ちだしを図った「シーボルト事件」により1829年に国外追放となるが、帰国後「日本」などの著書を刊行して西洋に日本を紹介した。59年にも再来日。62年に帰国後、66年に70歳で死去した。
 出島の企画展はシーボルトがお抱え絵師の川原慶賀らに描かせ、持ち帰った絵を基に刊行された「日本動物誌」「日本植物誌」を展示。収載された絵のうち19点をパネルで紹介している。植物は、シーボルトが愛する長崎の女性の名を学名に付けたアジサイをはじめ、出島内に今もある草花の10点。動物は絶滅種や絶滅危惧種の4点。ほかに色鮮やかな鳥、魚の絵もある。
 出島では12日、来場者向けのシーボルト出島上陸記念イベントを予定。企画展の「パート1」は10月1日まで開催。同13日~12月10日は企画展の「パート2」として、長崎の景色や風俗を描いた絵に焦点を当てた展示を行う。いずれも無料だが、同史跡の入場料が必要。
 同市鳴滝2丁目のシーボルト記念館は記念展として、「日本動物誌・魚類編」からマダイなど5点の絵をフランス刺しゅうで表現した作品など約30点を展示中。刺しゅう作品を制作した「グループ復活」の代表で同市の金子千津子さん(73)は「こうした機会に、市民にシーボルトの業績を知ってほしい」と話している。今月31日まで(月曜休館)。入館料一般100円など。
 このほか、同市立山1丁目の長崎歴史文化博物館では9月30日~11月12日「大シーボルト展」を開催。10月14日は同市尾上町の出島メッセ長崎で、市主催の記念式典が開かれる。

「日本動物誌・魚類編」収載の魚の絵を刺しゅうで表現した「グループ復活」の金子代表=長崎市、シーボルト記念館

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