長崎県内の老朽マンション 自治体が指導へ 9月から管理計画認定制度、実効性に疑問の声も

 分譲マンションの老朽化が全国的な懸案として顕在化しつつある。修繕積立金が足りず適切な維持管理が困難になるケースも。そこで、組合など民間による管理状況を自治体が把握し、指導や助言をできる「管理計画認定制度」が9月から、県内で段階的に始まる。所有者の管理意識を高め、物件の延命や資産価値向上を図る仕組み。リフォーム融資の利率が下がるメリットもあるが、関係者には実効性を疑問視する向きもある。
 長崎県によると、県内で築40年を経過したのは2020年時点で約1900戸。20年後には7倍強の1万3900戸にまで増える見通しだ。
 
 ■積立金不足
 ある長崎市内のマンション(22戸)は築45年以上。外壁にカビが生え、ベランダの手すりの支柱が崩れていた。管理組合は初めての大規模修繕工事を計画したが、既に他界した住民もおり、東京在住の遺族は「物件の価値はほとんどない」と相続に難色を示した。対話に時間を要しながらも同意を取り付け、昨年ようやく実施にこぎつけた。
 同市内の別の小規模マンションは雨漏りに悩む。発生源を見つけるには、足場を組んで外壁を広範囲に調査する必要があるが、積立金が不足し、着手できずにいる。
 老朽化は、外壁の剥落や災害時の倒壊など危険性を高める。住民だけでなく貸し手や相続人も含めた所有者の高齢化と合わせて“二つの老い”と称される。これらにより空室が増えれば、大規模修繕の資金が集まらず、管理不全に陥りやすい。
 
 ■維持・向上
 こうした中、22年の改正マンション管理適正化法施行により、修繕計画の策定や積立金の状況を地方自治体が確認し、問題があれば指導・助言できる仕組みができた。これに伴い、県と県内13市は共同で、国の方針に基づき管理計画認定制度をつくった。
 管理組合の申請を受け、各自治体は組合員の名簿や修繕計画、年1回の総会があるかなどを基準に優良物件として認定する。県内8町の申請は県が受け付ける。計2万4千円程度の手数料がかかり、5年ごとに更新が必要となる。
 県は、認定によって所有者らの管理意識が高まり、資産価値の維持・向上が図られるほか、中古物件の流動性も高まる効果を期待する。住宅金融支援機構は金利を優遇。共用部のリフォーム融資なら0.2~0.4%、中古物件の住宅ローンであれば0.25%(購入から5年間)をそれぞれ引き下げる。
 NPO法人県マンション管理組合連合会(西脇金一郎会長)も「業者に任せず持ち主が管理、運営する意識が重要」と制度化を歓迎。ただ、集会スペースや組合用ポストがないマンションは多く、「行政はどう指導するのか」と実効性を疑問視する。長崎市内のある管理会社は「結局、修繕積立金が集まらなければ救えない」と切り捨てる。
 県と長崎、佐世保、雲仙の3市は9月1日から制度の運用を開始する。他市も本年度中の開始を予定している。

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