別府市のモスク「セントラル九州マスジド」が15周年 多国籍の教徒の支えに【大分県】

会議でモスクの会計や行事を話し合うウズベキスタン、ナイジェリア、インドネシアなど各国出身のムスリム=7月、別府市若草町のセントラル九州マスジド
今夏、開設15周年を迎えた九州有数のモスク「セントラル九州マスジド」=別府市若草町

 【別府】九州有数のモスク「セントラル九州マスジド」(別府市若草町)が開設15周年を迎えた。多国籍のイスラム教徒(ムスリム)が六つのコミュニティーをつくり、運営費の寄付集め、イベント開催、掃除などで支え合うのが特色。住み込みの学者「イマーム」は悩み事に助言を与え、信仰と一体の日常生活を支えてきた。

 モスクは4階建てビル。1階が駐車場、2.3階が男女別の礼拝室、最上階がイマームであるカーン・アルタフさん(42)=パキスタン出身=一家の住居。宗教法人「別府ムスリム教会」が管理し、内部に事務所を構える。

 法人の役員で、開設に尽力した会社役員ザファー・サイードさん(41)=同国出身・同市石垣東=によると、立命館アジア太平洋大(同市十文字原、APU)の教員らと法人を立ち上げビルを購入。2008年夏、モスクを開いた。

 ザファーさんはAPUの1期生。00年の来日当初は県内にモスクがなく、宗教行事の一つを仲間と大学施設で迎えたことを覚えている。「めちゃくちゃ寂しかった」と振り返る。

 別府市亀川地域の賃貸物件に小さな礼拝所を構えるなど、段階的に拠点づくりを進めてきた。現在はAPUの留学生を中心に卒業生、その子ども、外国人労働者、日本人教徒、隣県のムスリムらが出入りする。今年4月の「断食月(ラマダン)」明けを祝う集団礼拝には数百人が集まった。

 出身国の多様性は、キャンパスの多文化・多言語環境を売りにするAPUのある別府ならではの特徴。パキスタン、バングラデシュ、ウズベキスタン、インドネシア、スリランカ、アフリカの6コミュニティーが代表会議を開き、会計から事業企画まで担う。

 利用者は日に5回の礼拝に足しげく通うほか「結婚を考えている相手がいる」「お祈り中、集中が続かない」といった相談があればイマームを訪ねる。金曜日には食事会も開かれる。

 APU生でウズベキスタン出身のムハマドユスフ・アブドゥラッツォコフさん(21)は「母国のモスクは純粋な礼拝所だけど、ここはそれ以上。世界の仲間と会い、交流し、一緒に食事もできる。本当に貴重な場所です」と説明する。

 利用者たちは「モスクを訪れる人は神の客」との考えから、他宗教・無宗教の人の訪問も温かく受け入れてきた。ザファーさんは「さらに開かれた場所にしていきたい。ムスリムかどうかに関わらず、生活に困った人たちを手助けしていきたい」と話している。

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