緑輝く水辺へ 記者が渓流釣りにチャレンジ 暑さも時間も忘れてのんびり満喫 #私の好きなとちぎ レジャースポット巡り①前編

 県生誕150周年を記念して実施した「とちぎの好きなところ」に関するアンケートで、回答が最も多岐にわたった「場所・地名」。回答者から挙がった100の項目の中には、日光東照宮やあしかがフラワーパークなどの人気観光地はもちろん、日光や宇都宮をはじめとした、市町名も多数あった。

 人々をそこまで惹きつける各市町の魅力ってなんだろう?深掘りしたら、県民も知らない“おもしろい”が隠れているかもしれない。地域の魅力を再発見すべく、「#私の好きなとちぎ レジャースポット巡り」と称して各地を取材して回りました。

「日光市三依地区」前編

 夏休み真っただ中。「出かけたいけど、暑さが心配」と行き先を決めかねている人も多いのではないだろうか。涼しくて、レジャーも楽しめるところってどこだろう-。

 宇都宮から車で約1時間40分。鬼怒川、川治温泉を抜け、「日光市三依地区」にたどり着いた。今回の目的地は緑がまぶしい山々に囲まれた「三依渓流つり場」。水質が良いとされる男鹿川の支流を利用した釣り場で、木々や鳥、虫たちの息づかいがすぐそばで聞こえてくる場所だ。まさに穴場という言葉がよく似合う。

 釣り場の受け付けで、2代目オーナー塩生康幸(しおのやすゆき)さん(39)が出迎えてくれた。つりは一人4千円で、別途さおの貸し出しやエサの販売もしている。釣り場は約800メートルの渓流が60エリアに区分けされており、好きなエリアを選ぶことができる。エリアを決めると、清流で養殖したイワナ、ヤマメ、マスを好きな組み合わせで計5匹放流してくれるという。「時間も匹数も気にせず、のんびり釣ってください」と塩生さん。手ぶらで楽しめて制限もないなんて、初心者や子どもでも気軽に楽しめそう。

 水辺は日陰が多く、風も通り抜ける。木々の緑や水面(みなも)が日を浴びてきらきらしている。夏であることを忘れさせるほどのすがすがしさだ。目いっぱい深呼吸して、いざ実践。魚たちが澄んだ水の中を気持ちよさそうに泳ぐ様を眺めていると、塩生さんに「放流後すぐがゴールデンタイムですよ!」と言われ、慌てて準備に取りかかった。塩生さんに教わりながら、餌となる新鮮な生イクラを針に刺し、川へ放り投げる。魚が餌のそばに寄ってくるたびに、そわそわ。息を潜め、浮きが沈むのを待った。

 ところがなかなか食いつかない…。何度も新しいイクラを針にセットし直したり、「ブドウ虫」と呼ばれる生き餌に変えてみたりするものの、手応えはない。「ピンチですね」と苦笑いの塩生さん。「でも、1度釣れたら良いリズムができますよ」と励まされ、根気強く魚の目の前に餌を流して誘った。

 諦めずに待つこと約30分。魚が餌をつつくようなしぐさをみせ、わずかに浮きが沈んだ。ゆっくり引き上げてみると、水面がバシャバシャと波打ち、さおがしなる。ぐっと手に力を込めてさらに引き上げると、大きなマスが姿を現した。

 初の収穫に高揚しながら、針を外すためにそっとマスの胴体をつかむ。人の手を逃れようと元気に動き回るひんやりとした体。手に伝わる感触に、改めて“生き物の命”を実感した。

 1匹釣ると、塩生さんの言うとおり良いリズムができたようだ。次々と魚がかかり、マスとヤマメ計6匹を釣り上げた。(後編につづく)

オーナーの塩生さん

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