「しっかり寝ているつもりなのに、日中に眠くなる」「仕事に集中したいのに、眠気に襲われて困ってしまう」など、日中の眠気でお悩みではありませんか?
日中の眠気の原因には、睡眠時間の不足だけでなく、睡眠の質の低下や、体内時計の乱れなどが考えられます。また、睡眠障害や、眠気を引き起こす病気が隠れているケースもあります。
今回は、日中に眠気が起こる原因や対策について解説します。
1.日中の眠気の原因は?
日中に眠くなる原因は、いくつか考えられます。以下に当てはまるものがないか確認してみましょう。
1‐1.睡眠時間が足りていない
適切な睡眠時間は人によって異なります。そのため、十分寝ているつもりでも、実は睡眠時間が足りていないというケースも考えられるのです。
適切な睡眠時間は、年齢によっても異なりますが、20~30代では約7時間の睡眠が必要とされています。睡眠不足が重なると、心身の疲労回復や自律神経の調節ができなくなるため、日中の集中力低下や眠気を招きます。
1‐2.血糖値の急降下
実は、血糖値の急降下も眠気と関係しています。
食事をして血糖値が急激に上昇すると、それを下げるためにインスリンというホルモンが大量に分泌されます。そして、その反動で血糖値が急降下する現象が起こります。血糖値が急降下することで低血糖状態になると、強い眠気があらわれることがあります。
また、早食いしたり、GI値の高い食品を摂取したりすると、急激に血糖値が上昇するため、眠気も強く出がちになります。
1‐3.睡眠の質が悪い
睡眠の質が悪い場合は、睡眠不足と同じ状態であるため、日中に眠くなることがあります。脳を休めるためには、深い眠りであるノンレム睡眠をとることが大切です。
飲酒や喫煙、カフェインの大量摂取、寝る直前の食事、快適でない室内環境、更年期障害、寝る前のスマホ操作やストレスによる交感神経の刺激などは、睡眠の質を下げる要因となりえます。
1‐4.体内時計のズレ
体内時計の乱れも眠気を引き起こす原因です。
人の体内時計は約25時間であるのに対し、地球の自転は24時間周期。体内時計は、その24時間に合わせるために、睡眠だけでなく、体温調節やホルモン分泌、免疫機能や自律神経などさまざまな機能を調節しています。
ところが、体内時計が乱れてこの1時間のズレをうまく調節することができなくなると、好ましい時間に眠ったり起きたりすることが困難になってしまうのです。
1‐5.薬の副作用
さらに、薬が日中の眠気の原因になることも。花粉症の治療薬や、風邪薬に含まれる「抗ヒスタミン剤」は眠気や集中力の低下を引き起こすことがあります。
また、常用している薬剤がある場合は、そのなかに眠気を起こすものが含まれている可能性もあるでしょう。
2.日中の異常な眠気は睡眠障害の可能性も
日中に強い眠気が起こり、それが睡眠不足や生活習慣の乱れによるものではない場合は、病気の可能性もあります。
日中に異常な眠気を起こす病気としては「睡眠時無呼吸症候群」がよく知られています。この病気は、肥満や扁桃肥大、アデノイドの肥大などが原因となり、睡眠時に何度も無呼吸状態を繰り返すのが特徴です。日中に強い眠気が起こり、重大な事故を起こすケースもあります。
また、日中に数回強い眠気に襲われて、仕事や生活に支障をきたす「ナルコレプシー」という病気もあります。これは、脳の中のオレキシンを作る神経細胞が働かなくなるために起こる症状です。眠気の他に、急にからだの力が抜けてしまう脱力発作や入眠時幻覚、金縛りなどを伴います。
さらに、眠気が一日中続く「突発性過眠症」という病気もあり、ナルコレプシーと突発性過眠症を合わせて過眠症と呼びます。
他にも、日中の眠気を起こす病気には、うつ病や月経前症候群などがあります。
眠気によって、思わぬ事故やトラブルなどを起こさないためにも、心配な場合は早めに専門医へ相談しましょう。
3.日中の眠気を抑えるのに効果的な対策
ここでは、日中の眠気を改善するために効果的な方法をご紹介します。日常生活にすぐとり入れられるものもあるため、参考にしてください。
3‐1.朝と昼に日光を浴びる
日光を浴びることは眠気の改善に効果的です。
睡眠には、メラトニンとセロトニンというホルモンが深く関わっています。夜、眠くなるためにはメラトニンが必要ですが、メラトニンの原料となるのがセロトニンです。セロトニン神経は日光を浴びることで活性化され、分泌が高まります。
朝、起きたらカーテンを開け、しっかり朝日を浴びましょう。セロトニンは無限に増えるわけではないため、日中は15〜30分程度日光にあたるように意識しましょう。
3‐2. 就寝前の悪習慣をやめる
質の悪い睡眠は、睡眠不足の状態と同じです。
タバコやアルコール、寝る前のスマホなど、深い眠りを妨げる原因をとり除きましょう。
スマホやパソコン、ゲーム機から発せられるブルーライトは、体内時計を乱すだけでなく、脳を覚醒させメラトニンの分泌も抑制させてしまいます。メラトニンの分泌が少なくなると、眠りが浅くなり、睡眠障害にもつながるのです。
3‐3.毎日決まった時間に起床・就寝する
睡眠習慣を整えるためには、毎日寝る時間と起きる時間を決めておくといいでしょう。
眠りのリズムには、ホルモンも深く関わっています。
朝は、血圧や血糖値を上げて起床準備をするコルチゾールが分泌されます。コルチゾールは抗ストレスホルモンとも呼ばれ、朝に分泌のピークを迎えます。
また、夜になるとメラトニンが良質な睡眠をもたらします。メラトニンは、起床時から14~15時間後に分泌され始め、その2~3時間後にピークを迎えるため、起床時間と就寝時間に深く関わります。
そして、寝ている間には成長ホルモンが分泌され、細胞を修復したり、骨や筋肉を丈夫にしたりしています。しかし、成長ホルモンは深い眠りのときにしか分泌されないため、いかに質の良い眠りをするかが重要となります。
このように、眠りに関わるホルモンの分泌時間をそろえるためにも、規則正しい生活が大切です。
4.眠りの悩みには漢方もおすすめ
眠りの悩みは、人それぞれ違うもの。せっかく寝る時間を確保できても、いざ寝ようと思うと眠れない、長時間眠れない、すぐに目が覚めてしまう……などさまざまです。
漢方薬では、睡眠薬のように脳を眠らせるのではなく、眠りを妨げる原因に内側からアプローチしていきます。
日中の眠気は、睡眠不足、ストレスや緊張による自律神経の乱れや過労などが原因と考えられています。
日中の眠気の改善には、
・自律神経を整えて、ストレスを緩和し、睡眠の質を改善する
・血流改善によって中枢神経の機能を回復し、眠気を改善する
・栄養を全身に届けることで、心とからだを元気にする
などの作用を含む漢方薬を選び、根本改善を目指します。
漢方薬は眠りを誘発するのではなく、眠れる体質に導いてくれるため、より自然で質の良い眠りが得られるでしょう。
<眠りのお悩みにおすすめの漢方薬>
・酸棗仁湯(さんそうにんとう)
からだも心も疲れているのに、眠れない方に向いています。
気(エネルギー)を巡らせて、精神活動を司る心にたまった熱をとりさることで、眠りやすくします。
・柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
人付き合い、仕事などのストレスによる不安やイライラなどで眠れない方に向いています。
ストレスなどで滞った気(エネルギー)の流れを整えて、気持ちを落ち着かせることで不眠に働きかけます。
・加味帰脾湯(かみきひとう)
虚弱体質で血色の悪い方に向いています。
精神活動を司る心に血(栄養)を補うことで、精神活動を安定させてイライラや不安、不眠を改善します。
眠りの悩みは人それぞれ違い、ときには複数の漢方薬を組み合わせた方が良いケースもあります。また、症状が似ていても、体質やタイプによって使う漢方薬が異なる場合もあります。
漢方薬を選ぶときに重要なのは、その人の状態や体質に合っているか、ということです。うまく合っていないと、効果を感じられないだけでなく、場合によっては副作用が生じることもあります。
スマホで気軽に専門家に相談できる「あんしん漢方」のような、オンライン個別相談も話題です。あんしん漢方はAI(人工知能)を活用し、漢方のプロが効く漢方を見極めて自宅に郵送してくれるオンライン漢方サービス。
スマホで完結できるので、対面では話しづらいことも気軽に相談できますよ。お手頃価格で不調を改善したい方は、医薬品の漢方をチェックしてみましょう。
5.適切な睡眠時間を確保して体内リズムを整えよう
睡眠は、からだだけでなく、心の疲れを回復させるためにもとても大切です。
若い世代は、仕事や育児、家事などやることが多く、つい睡眠時間を削ってしまいがちです。しかし、しっかり睡眠をとらないと、日中のパフォーマンスが低下したり、疲労感が増したり、イライラしたりと悪影響が出てしまいます。
大切なのは、しっかりと睡眠時間を確保することと、体内時計を整えて質の良い睡眠をとることです。
ぐっすりと眠り、スッキリと目覚めて、いきいきした毎日を過ごしましょう。
<この記事を書いた人>
あんしん漢方薬剤師
相田 彩(あいだ あや)
昭和薬科大学薬学科卒業。総合リハビリテーション病院・精神科専門病院・調剤薬局の現場で漢方薬が使用される症例を多く経験。
医薬品での治療だけではなく、体質や症状に適した漢方薬を活用し根本改善を目指すことの重要性を実感する。
現在は、症状・体質に合ったパーソナルな漢方をスマホ一つで相談、症状緩和と根本改善を目指すオンラインAI漢方「あんしん漢方」でサポートを行っている。
(mimot.(ミモット)/ あんしん漢方)