<社説>学校給食費無償化 「学び」のためにも実現を

 地域間格差の解消に向けた第一歩だ。県が2025年度から第3子以降の学校給食費を無償とする方向で検討に入った。県は26年度からの完全無償化を目指しており、国と連携した取り組みが急務だ。 県によると、給食費を完全無償化しているのは41市町村中、名護市や嘉手納町など14市町村で、第3子以降の全額無償化や半額助成などの一部助成は15市町村となっている。一方で、子ども1人当たり1カ月約5千円を徴収している自治体もある。

 給食費が無償の子もいれば、毎月給食費を払わなければならない子がいる。住む場所によって沖縄の将来を担う子どもたちの支援に格差が生じているのが現状だ。解消を急がなければならない。

 玉城デニー知事は22年の知事選で学校給食費無償化を公約として掲げていた。子育て支援の一つの目玉である給食費無償化を全県で実施することは格差是正の観点からも必要な措置である。

 政府は3月に打ち出した「異次元の少子化対策」の中で、給食費の無償化に向けて「課題の整理を行う」との方針を示した。県は学校給食費の完全無償化には60億円が必要だと試算している。給食費無償の実現には自治体側の負担も発生しよう。財源確保に向けた調整作業を加速化させる必要がある。

 県教育庁が23年4月に実施した調査によると、各市町村の給食費の平均月額は小学校は4023円、中学校は4534円だった。文部科学省による18年度調査に比べ小学校で346円、中学校で336円上昇した。食材費の高騰などが影響しているとみられる。物価高やエネルギー価格の高騰などが県民生活を直撃する中、給食費が今以上に上昇すれば、保護者への負担はさらに重くなる。

 「子どもの貧困」が問題になって久しい。県内にも家庭の経済状況によって満足に食事ができず、成長期に不可欠な栄養を取ることができない子どもがいる。そのことを考えても、貴重な栄養源となる学校給食の無償化は最重要施策と言わなければならない。

 海外ではフィンランドが学校給食を無償で提供しているほか、米国ではカリフォルニア州が22~23年度から無償提供を始めた。学ぶ環境を重視し、政治が決断した結果だ。

 日本の学校給食法は施設の整備費や調理員の人件費は自治体、それ以外は保護者負担と定めているが、同時に憲法は義務教育を「無償」とすることを保障している。近年は学校給食は地産地消などを体験する場にもなっており、「学び」を保障する上でも給食無償化の流れは必然だ。

 給食の重要性や役割を見つめ直し、高い質を維持しながら無償化を実現することが、有効な子育て支援策となるだろう。国と緊密に連携し、県は無償化を含めた幅広い子育て支援を確実に実施していくべきだ。

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