「冬ソナ」20年

 「物見高いは江戸の常」と言うように、江戸っ子は好奇心が強かった。日本人は今なお、その気風を受け継いでいるのかもしれない。「日本初」といった売り文句を付けると、韓国のドラマや映画はたちまちヒットするという▲20年前に韓国から来日し、番組制作を手がける黄仙惠(ファンソンヘ)さんが近著「韓国コンテンツのグローバル戦略」(星海社)にそう書いている。この売り文句はドラマ「冬のソナタ」の頃から不変らしい▲日本で初めて放送されてから今年で20年。それ以前の韓流ドラマはレンタル店で少し流通していたくらいで、「冬ソナ」が事実上、日本人が触れた「初めての韓流」だった▲ご存じの通り、中高年の女性を中心に韓流ブームが巻き起こった。ポピュラー音楽「K-POP(ポップ)」が引っ張る現在の韓流人気は主に若い世代が担っている▲25年前、韓国の金大中(キムデジュン)大統領は就任演説で「文化は21世紀の基幹産業」と宣言した。「文化」を商品として世界に輸出するのだ、と。「冬ソナ」が口火を切り、物見高い日本人は歓迎した▲韓国でも、映画やアニメなど日本文化への関心が過去になく高い。文化を互いに受け入れるが、外交はどうだろう。日米韓の3首脳が会談し、広い分野での協力を確認する。「冬ソナ」に遅れること20年、政治の「新時代」は到来するか。(徹)

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