「開放と集中」の新美大 キャンパスお披露目

10月に供用開始される金沢美大新キャンパス=小立野2丁目

  ●市民が構内で芸術鑑賞

  ●学生は創作に没頭可能

 10月に小立野2丁目に移転する金沢美大の新キャンパス建設地で19日、報道陣向けの内覧会が開かれた。「開放と集中の両立」をテーマに、市民が大学構内に出入りして芸術鑑賞を楽しめるよう工夫した一方、学生が専門領域の垣根を越えて創作に没頭できる環境も整えた。戦後、金沢の文化芸術を支えた美の拠点は生まれ変わった姿で再スタートを切る。

 新キャンパスの延べ床面積は現キャンパス(小立野5丁目)の約1.3倍となる約3万7400平方メートル。金大工学部跡地に移転され、2021年1月から建設工事が進められた。工事費は約150億円となる。

 現キャンパスと異なる特徴の一つは、道路に面して塀や門を設けておらず、市民が気軽に構内に入ることができる。

 構内では、巨大なガラス屋根で覆ったメイン通り「アートプロムナード」に接するように校舎を配置。ガラス張りの校舎内には、学生の作品を展示して合評するスペース「アートコモンズ」9カ所を通り沿いに設け、市民も自由に眺められるようにした。コモンズは最大で高さ約8メートル、面積約500平方メートルに上る。

 工房を中心とする4号館には、学生が制作に打ち込める広さ約1600平方メートルの「創作の庭」を配置。学科・専攻ごとに工房を有した現キャンパスと違い、庭に面してコの字型に美術、デザイン、工芸の全学科が共有して使える「共通工房」を設けた。全国的にも珍しい試みで、互いに刺激を受けながら創作に精を出してもらう狙いがある。

 4月に大学院映像コースを新設したため、撮影スタジオを一つから三つに増やし、映像制作、録音、アニメーションの各スタジオも完備した。芝生広場の外側には、辰巳用水に沿って遊歩道を整備し、卒業制作の優秀作品を展示した。

 同大建設事務所の辰巳浩樹所長は「地域の大学として親しまれ、学生が質の高い教育研究を実践できる場になればいい」と話した。

 20日に竣工(しゅんこう)式、27日午前9時から一般向け内覧会(申し込み不要)が行われる。10月1日に供用を開始し、2日から授業を始める。

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