猫保護、終わりなき戦い 県内愛護団体に依頼相次ぐ

「えんたね」が世話する猫たち。動物愛護団体には保護の依頼が相次いでいる=寒河江市

 県内の動物愛護団体に、猫の保護依頼が相次いでいる。不妊・去勢手術をせず、増え過ぎて飼育できなくなる「多頭飼育崩壊」や、飼い主の高齢化などが背景にある。猫の繁殖力や適正飼育に対する住民の認識不足なども重なり、各団体の活動は終わりが見えない。関係者は「愛護団体と行政が連携し、啓発活動に力を入れる必要がある」としている。

 「保護依頼の電話がなりやまない」。NPO法人・あーちゃんの家(山形市)の木村貞子理事長は言う。自宅の2、3階には保護したり、高齢者らから預かったりした猫が約50匹いる。さらに本年度から市内の空き家を活用。今月上旬までは、米沢市内の多頭飼育崩壊した現場で保護した15匹も収容していた。

 増え過ぎて食事やふん尿の処理などの世話ができず、近隣とトラブルになる多頭飼育崩壊は近年、社会問題化している。寒河江市に拠点を置くボランティアグループ「えんたね」は「(2019年成立の)改正動物愛護管理法の影響などで、責任を持ってペットを飼おうという意識が高まり、ようやく問題が表面化してきたのではないか」と推察する。

 繁殖を抑えようと、遊佐町は16年度に不妊・去勢手術費の助成を始めた。取り組みは県内に広がり、本年度は県内13市町が助成を行っている。えんたねの沖津由美代表は、自治体による助成に加え、「猫に対する意識をもっと変えないといけない」と指摘する。例えば、飼い主側は完全室内飼いをする、地域住民側はむやみに餌を与えない―などだ。

 県食品安全衛生課によると、本県の猫の収容数は13年度の2373匹から減少傾向を示し、22年度は238匹(中核市の山形市を除く)だった。手術費助成の広がりとともに、自治体側が引き取る上で、飼い主側に正当な理由が求められることなどが要因とみられる。少なくとも17ある県内の動物愛護団体が、潜在的な受け皿になっている可能性もある。

 愛護団体の多くは自己資金や賛同者の寄付などで活動費用を捻出している。受け入れ数は限られる。保護依頼があっても断らざるを得ないケースがあり、関係者は「助ける命を選ばなければならないのが、つらい」と嘆く。

◆猫の繁殖力 猫は1年間に発情、出産を2、3回繰り返す。交尾の刺激で排卵するため、交尾すればほぼ確実に妊娠し、一度に4~8匹を産む。その猫は生後半年ほどで生殖能力を持つ。

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