【タイ】貢献党が11党の連立を発表、上院も支持か[政治]

タイ貢献党は21日、同党を中心とする11党による連立の枠組みを発表した=タイ・バンコク(NNA撮影)

タイ貢献党は21日、新政権発足を目指す連立の枠組みを発表した。連立には、5月の総選挙で第2党となったタイ貢献党を筆頭に、第3党のプームチャイタイ党(タイ名誉党)や国家建設タイ合同党(UTN)、国民国家の力党(PPRP)など11党が名を連ねる。連立は22日に国会で実施される首相選出投票で、タイ貢献党のセター氏を候補に立てる。

タイ貢献党は5月の総選挙で、前進党の151議席に次ぐ141議席を獲得。タイ名誉党は3位の71議席、PPRPは40議席、UTNは36議席を獲得した。11党の連立は、合計で314議席の陣容となる。22日の首相選出投票では、上院を合わせた過半数の374議席獲得を目指す。親軍色が強いUTNやPPRPが連立に参加することで、上院からは一定の支持を得られる可能性がある。ある上院議員は地元紙に対して、「190人前後の上院議員がセター氏を支持するだろう」との見方を示した。

連立による合意では、タイ貢献党からは首相のほか8人の閣僚が割り当てられる予定。タイ名誉党からは4人、PPRPとUTNからはそれぞれ2人ずつが閣僚に選出されるとしている。

■世論の反発は不可避な情勢

タイ貢献党から首相が選出される見通しが高まった一方、同党が親軍政党と組んだことで、政権に対する世論の反発は避けられない情勢だ。国家開発管理研究所(NIDA)が20日に発表した世論調査では、タイ貢献党の動向について64%が「賛同しない」と回答。タクシン元首相派の団体「反独裁民主統一戦線(UDD)」のリーダー、ナタワット氏は「タイ貢献党に対する自分の使命は終わった」とし、辞任を示唆した。

総選挙では、タイ貢献党が将来的に親軍政党と組む可能性を明確に否定しなかったことから、前進党への投票を決めた有権者は多いとみられる。特に、14年のクーデターを主導し、金権スキャンダルの疑惑が浮上していたプラウィット副首相へのアレルギーは、旧与党を嫌う勢力の間では幅広く共有されている。

タイ貢献党幹部のペートンタン氏は支持者に対し、親軍政党との連立について「国が前に進むためには必要な選択だった」と説明し謝罪した。ただ、同党は選挙戦では「政界から老人を追放する」ことを繰り返し発信しており、世代交代を重要な方針に掲げていた。「旧勢力」の象徴的な存在であるプラウィット氏が党首を務めるPPRPが与党入りしたことから、タイ貢献党内部からも不満が出る可能性があり、政権に対する支持率は伸び悩む可能性は高い。また、親軍系の政党が与党入りする過程では、タクシン元首相の帰国を巡って水面下で取引があったとは、国民の大半が信じる「うわさ」となる。取引の真偽は明らかになっていないものの、タイ貢献党がこうした「私事」を優先し、初志を曲げたとの疑念を払拭するのは、簡単ではない。

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