三輪自転車で ごみ拾いへ 東長崎の赤瀬忠節さん(81) 続けるうちに 地元の“有名人”

愛用する三輪自転車の前で「いい環境を残してやりたい」と地元への感謝の思いを語る赤瀬さん=長崎市 田中町

 長崎市の東長崎地区で歩道の除草やごみ拾いをしている高齢男性がいるという情報が本紙情報窓口「ナガサキポスト」のLINE(ライン)に届いた。「決まった時間、場所で見かけることがなく、暑さや寒さが心配ですが、感謝の気持ちを伝えたい」。そんな投稿者の思いを伝えようと、記者が現地を訪ねた。
 「三輪自転車のおじいさんですよね?」「この辺の人はみんな分かりますよ」-。名前は知らずとも、その存在は広く知られていた。日によって作業する場所が変わり、早朝から東長崎地区の矢上大橋や東望の堤防沿い、戸石や日見方面まで電動アシスト付きの三輪自転車ですいすい出かけて行くという。
 手掛かりを頼りにたどり着いたかの人は、同市田中町に暮らす赤瀬忠節(ただとき)さん(81)。長年、地域のために行動する思いを聞いた。
 赤瀬さんは同市中里町に生まれ、東町、田中町と東長崎地区で過ごしてきた。1957年に中学を卒業後約60年間は左官職人として働き、妻を亡くした20年前から娘家族と同居する。「せっかくこの世に生まれたから、ささやかな奉仕ができれば」と、仕事の合間に少しずつごみ拾いをしていたが、退職を機に5年前からほぼ毎日、早朝6時から3時間ほど活動。海岸や道端のごみを拾い、草を刈り、荒れ果てた場所には花を植えて整える。
 「きれか場所には捨てにっかでしょ。ポイ捨てはだいぶ減ったとは思うけど、ゼロにはならんごた」。読者からの感謝の気持ちを伝えると「そういった声かけはとても励みになる」とほほ笑んだ。
 根気強く働く動機は地元への感謝。子や孫、そしてまだ見ぬひ孫もきっと、この地で育つと思うと「少しでもいい環境を残してやりたい」という思いも強くなったという。名前通り、地域に忠節を尽くす赤瀬さんは、広い目、長い目で世間を見詰め、行動で示している。

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