【大規模買収事件】元市議と検察とのやり取りはの一部が明らかに

4年前の参院選での大規模買収事件で、現金を受け取ったとして起訴されている元・広島市議の被告の弁護士が記者会見を開きました。そして、録音していた検察による取り調べ等の一部を明らかにしました。

■検察官(録音テープメモ)

「できたら議員続けていただきたいと思っているわけで。そのレールに乗ってもらいたい」

明らかにされたのは、元広島市議の木戸経康被告が録音していた、検察による取り調べ等の一部です。木戸被告は4年前の参院選を巡り、河井元法務大臣から買収目的で、現金30万円を受け取った疑いで起訴されています。木戸被告は、”自己防衛”として、一連のやり取りを録音したとしています。

■検察官(録音テープメモ)

「全面的に認めて、それで反省しているんだということを出してもらって、それでいい話なんです。それでなんとか処分を、不起訴であったり、なるべく軽い処分にと。」

検事は不起訴にすることを示唆。受け取った現金が買収目的だったと認めるように供述を誘導したともとれる場面もあります。

■検察官(録音テープメモ)

「とにかくもう事実話して反省しとるんだという内容の書類にしたいと思ってるんで」

■検察官(録音テープメモ)

「誰からもらいましたかって言ったら、さっきおっしゃった河井克行という、それだけ言ってもらったいい」

これらからは、一連の取り調べなどでのやり取りが、検察の意向に沿うように進められていたことが伺われます。そして…

■木戸被告(録音テープメモ)

「これでよかったんですかね?」

■検察官(録音テープメモ)

「絶対よかったです。絶対正解だと思います。それはもう保証しますので」

これらの内容を明らかにした、木戸被告の弁護士は。

■田上剛弁護士

「(このやり取り取りは)ちょっとひどすぎるのではないかと思う。刑事事件で、公益の代表者である検察官が12回にも渡って、完全に本人を有罪にするかのような内容を河井さんを有罪にするために使って証人テストをするのは普通ではないと思う」

そして木戸被告の弁護士は、検察が不起訴にすることを示唆した上で買収を認めさせた、「利益誘導」の疑いがあると、改めて強調しました。一方、広島地裁で審理が続く木戸被告の公判では、検察が被告の供述調書を証拠として請求しておらず、音声データも証拠採用されていません。木戸被告は、7月にあった初公判で「無罪」を主張…。「検察による供述誘導があった」としています。

弁護側が改めて明らかにした検事の一連の取り調べ等について、刑事法学の専門家に聞きました。

■広島大学大学院 吉中信人教授

「不起訴という言葉を出している時点で、かなりアウトに近いと思います。本来、河合克行氏の裁判に協力して欲しいということで調書を取っていると思うんですけど、協力しなければ自身の起訴、あるいは強制処分がかけられるといったような不利益な事がもたらされますよという事を示唆していますので。全体としては検察の方針に協力してもらえれば悪いことにはなりませんよということを示唆していますので、これは任意性を欠く取り調べと言わざるを得ないと思う。刑事裁判自体の証拠としては許容されていませんので取り入れられていませんので裁判自体に対する直接的な影響力はないと。ただこういった取り調べが実際に行われていたんだということになれば、社会的には検察組織に対する責任というものが追求されざるを得ない。」

広島地裁で続く木戸被告の公判では、8月30日に、被告本人への質問が予定されています。

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