緑の機関車が「ブルン」 廃線から55年「林鉄」が復活 観光用列車として再興 兵庫・宍粟

55年ぶりに復活した波賀森林鉄道の機関車。周回コースをゆっくり走った=フォレストステーション波賀(撮影・辰巳直之)

 高らかな汽笛とともに、宍粟の地で機関車が再び動き始めた。大正から昭和にかけ、兵庫県宍粟市波賀町で木材を運んだ「波賀森林鉄道(林鉄)」が26日、廃線から55年ぶりに復活した。地元の住民グループが観光用列車として再興を目指し、野外活動施設「フォレストステーション波賀」(同町上野)に108メートルの周回コースを整備。重さ5トンの緑の車両がゆっくり動く様子を、関係者ら200人以上が見守った。(村上晃宏)

 林鉄は国の大阪営林局(現・林野庁近畿中国森林管理局)が運営し、国有林から切り出したスギやヒノキを運んだ。1916(大正5)年から山奥を走る複数の路線が整備され、最盛期の昭和30年代には総延長が40キロ以上にも及んだ。

 同町では多くの住民が林鉄関連の仕事に就いたが、脱線や転覆の事故も多く、次第に安全なトラック輸送へと時代は移った。68年7月15日に閉鉄式が開かれ、廃線となった。

 そんな林鉄を復活させようと、2016年、住民グループ「波賀元気づくりネットワーク協議会」が発足。20年、競売にかけられたディーゼル機関車を取得し、約1千万円かけて線路を整備した。

 26日は子どもたち約30人が、線路を敷設する最後の作業に協力。レールや枕木に名前を記し、林鉄路線を完成させた。続いて記念式典があり、機関車が「ブルン」と音を立て、煙を噴かして出発。波賀中学校吹奏楽部員が演奏する「銀河鉄道999」の曲とともに周回コースを走った。

 同グループは今後、人を乗せて定期運行することを目指す。線路を約570メートル延伸して森の中を通るコースを整備し、25年にオープンする構想もある。松本貞人会長(62)=同町=は「夢がさらに一歩、近づいて感激している。復活した林鉄が地元のシンボル的な存在になれるよう頑張りたい」と意気込んだ。

© 株式会社神戸新聞社