元寇船いかり 保存処理本格化 トレハロース使い強化 2025年3月作業完了見込み 長崎・松浦

いかりが入った保存処理槽の水にトレハロースを混ぜる職員(右)=松浦市立埋蔵文化財センター

 昨年10月、長崎県松浦市鷹島町の「鷹島海底遺跡」から引き揚げられた鎌倉時代の元寇(げんこう)船の木製大型いかり(一石型いかり)の展示に向けた保存処理が本格化している。脱塩と洗浄を終えており、市は8月31日、トレハロース(糖類の一種)を浸透させる強化処理作業を同町の市立埋蔵文化財センターで始めた。
 保存処理は今年1月からスタート。乾燥後の変形や収縮を防ぐため、真水に入れて塩分を取り除く作業を8月1日まで続けた。その後、温水に入れて洗浄作業などに取り組んできた。これからはトレハロースを含んだ溶液に入れ替えて木材に染み込ませていく。
 31日は同センターの職員2人が、60度に温められた3千リットルの水に60キロのトレハロースをかき混ぜながら注入。状況を見ながら少しずつ量を増やし、最終的に70%まで濃度を高めていく。
 今回の作業は2025年3月までの期間を見込む。松浦市文化財課の山口哲広課長補佐は「作業の過程で得られるデータが研究成果として将来につながる。専門家の先生方の指導も仰ぎながら着実に作業を進めていく」と話した。

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