長崎県「離島留学制度」 改善策報告書案示す 検討委、壱岐事案を受け

離島留学制度改善に向けた提案

 長崎県の離島留学制度を利用し県立壱岐高に在籍していた男子生徒=当時17歳=が行方不明となり死亡した事案を受け、設置された「これからの離島留学検討委員会」(委員長・本田道明県立大学長補佐)の最終会合が3日、県庁で開かれた。事務局の県教委はこれまでの協議を踏まえ、同事案の検証結果や、地域全体で留学生を支える体制づくりや里親への支援拡充など制度改善策を盛り込んだ報告書案を示した。
 検証作業は実親や里親、他の生徒など幅広く聞き取り。行方が分からなくなった背景には、男子生徒が里親の信頼を損なう言動を自ら取って自己嫌悪に陥り、親しい友人の転居や、将来への不安や迷いを日常的に抱えていたことなど、複合的な要因があったと推察。その上で、生徒や里親の悩みやSOSをキャッチし、救済する組織体制の構築を急務とした。
 制度改善に向けた三つの柱として(1)生徒や里親に対するサポート体制の強化(2)生徒の受け入れ体制の見直し(3)生徒に対する地域全体での見守り-を挙げた。
 (1)の具体策として、SOSがあれば、学校や市町、スクールカウンセラー、社会福祉士、民生委員らが組織的に対応。事前に危機管理マニュアルを作成しておく。里親が1人で悩みを抱え込まないよう、専門家も交えて相談に応じ、研修会を実施する。教職員の負担軽減のためにも、学校に配置している離島留学支援員を増員する。
 (2)は、不登校経験者などさまざまな生徒がいる実態を踏まえ、入学希望者やその親に、学校の特色や親元を離れて生活する大変さなどを丁寧に説明する。里親の役割を明確化し、児童福祉法上の里親と区別するため名称変更を検討。市町の移住施策と組み合わせ、親子で移り住む形も認める。
 (3)は教職員や里親以外の大人が関わり、地域全体で留学生を見守る環境が必要とし、地域での体験行事などの充実を図る。
 このほか、対馬高と五島高の寮は、教職員が宿直業務を担うため、管理体制を見直す。
 こうした改善策の実効性を高めるため、制度の検証や改善に取り組む組織や、SOSや緊急の相談に対応するチームなど、体制の再構築を提案した。
 会合では報告書案に対し、委員から「SOSを発せない子どもをどう発見するかが大事。普段からの声かけや関わり、それぞれができることを分担する持続可能な制度にすべきだ」などの意見が挙がった。
 報告書案は一部修正後、2週間以内に県教委ホームページで公開する。これを受け県や各市町が施策に反映する。同検討委は県教委が4月に設置。壱岐、対馬、五島3市に置いた検討部会でも協議し、関係者アンケートを参考にした。


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