市立病院勤務の研修医自殺「原因は長時間労働」 両親が1.3億円の損害賠償求め、伊丹市を提訴 労基署が労災認定 兵庫

伊丹市役所=伊丹市千僧1

 伊丹市立伊丹病院(兵庫県伊丹市昆陽池1)で勤務していた男性研修医=当時(25)=が2018年に自殺したのは長時間労働などが原因だったとして、男性の両親が病院を運営する同市に約1億3千万円の損害賠償を求め、神戸地裁に提訴していたことが分かった。伊丹労働基準監督署が労災認定したといい、両親側は訴状で「事実関係の調査を行い、研修体制の検証も含めた再発防止策を検討すべき事案だ」と訴えている。

 提訴は7月3日付。訴状によると、男性は大阪大を卒業後、18年4月から同病院で勤務。オリエンテーションを受けた後、同年5月は外科、6月以降は呼吸器内科に配属された。

 同年7月11日に男性が無断欠勤し、翌12日に同僚が病院近くにある寮を訪ねたところ、自室で男性が亡くなっているのを見つけた。伊丹労基署は今年3月1日付で労災認定し、亡くなるまでにうつ病のような症状が出ていたと考えられる、とした。

 両親側によると、同労基署の認定では、死亡前の1カ月間(18年6月13日~7月12日)の法定時間外労働は約80時間、その前の1カ月間(同年5月13日~6月12日)は約70時間とされた。両親側は病院施設の出入り記録から、18年5月の法定時間外労働は約100時間、同年6月は約97時間に達したと計算し、当直では実質30時間以上の連続勤務もあった、としている。

 手術や患者のみとりといった特異な体験、技術不足などに悩んだと思われる状況もあり、男性のスマートフォンのメモ帳には「ぼくはもう限界」「これ以上がんばりたくない」などの記述があった。両親側は「強い精神的負荷を受けていた」とし、「過度な時間外労働をさせるなどした」と病院の責任を訴えている。

 同病院は神戸新聞社の取材に「係争中のため、コメントを差し控える」とした。

   ◇   ◇ 自殺を思いとどまってもらおうと、公的機関や民間団体が相談窓口を開いている。

 兵庫県は、平日昼間は各地域の健康福祉事務所で、夜間や土日祝日は「いのちと心のサポートダイヤル」で電話相談に応じる。

 このほか、弁護士や精神保健福祉士が対応する窓口(TEL078.341.9600)では、家庭生活や経済問題など専門的な問題に即応し、心のケアも担う。神戸市が開設する「自殺予防とこころの健康電話相談」(TEL078.371.1855)もある。

© 株式会社神戸新聞社